最新記事

言論

中国が「密告ホットライン」を開設、ネット民に告げ口を奨励

China Encourages Citizens to Report Each Other for 'Mistaken Opinions'

2021年4月20日(火)16時38分
ローレン・ギエラ
「監視する中国共産党」の壁画(上海)

当局は一般市民に対して「積極的に社会に目を光らせる」よう呼びかけている(写真は2020年1月28日、上海) Aly Song- REUTERS

<共産党結成100周年を7月に控え、ますます「誤った意見」は言えなくなる閉塞社会>

中国共産党は4月9日、インターネット上で中国共産党を批判したり、党の歴史解釈を問題視したりするコメントを見つけた場合に「通報」できるホットラインを開設した。7月の共産党結成100周年に向けた取り締まり強化策の一環だ。

中国サイバースペース管理局(CAC)の通達によれば、同ホットラインは、インターネットユーザーがオンライン上で「誤った意見」を拡散している者を見つけたら通報できるようにすることで、「好ましい世論の雰囲気」をつくることを目的としている。

「しばらく前から、さまざまな魂胆を持つ一部の者が、インターネット上でニヒリスティックな(虚無的な)誤った主張を展開してきた。悪意をもって共産党や国の歴史、軍の歴史に関する事実を歪曲したり批判したり否定したりして、人々を混乱させようとしてきた」とCACは通達で述べる。「多くのインターネットユーザーが積極的に社会に目を光らせ、有害な情報を報告してくれることを期待する」

ホットラインは「歴史的ニヒリズム(虚無主義)」を一掃するための取り組みだ。ロイターによれば、この「ニヒリズム」は中国では、歴史に関する中国共産党の公式解釈を否定・疑問視する考え方を(批判的に)指摘する言葉として使われている。

議論の許容範囲が「大幅に縮小」

戦略国際問題研究所の上級アドバイザーで中国部長のスコット・ケネディは、今回のイニシアチブで中国当局が真に重視しているのは、歴史をめぐる議論ではないと次のように指摘する。

「現在の指導部は、中国の歴史に関する議論を管理し、公式な解釈とは異なる意見を制限しようとしている。全ては現在の指導部と習近平国家主席について、人々が肯定的な見方をするように導くためだ」

中国のインターネットは既に、世界で最も厳しい部類に入る検閲下に置かれており、諸外国のソーシャルメディアサイトや検索エンジン、ニュースサイトは閲覧できないようになっている。ケネディは、新たなホットラインは「議論の許容範囲が大幅に縮小していること」を示す一例だと述べた。

CACの通達は、批判的なコメントを拡散した者に対して、どのような罰が科されるのかについては説明していない。だが中国では既に、共産党の指導部や政策、過去の出来事についての解釈を批判または疑問視するコンテンツを投稿した人々が、禁錮刑をはじめとするさまざまな刑罰に直面している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 5

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 6

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中