最新記事

米中関係

米中首脳電話会談を読み解く――なぜ「とっておきの」春節大晦日に?

2021年2月12日(金)17時48分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2013年12月、訪中したバイデン副大統領(当時)と握手する習近平国家主席 Lintao Zhang-REUTERS

2月11日、バイデン大統領と習近平国家主席が電話会談した。両国の正式発表の相違にも問題があるが、あえて祝福ムード満開の春節大晦日に電話して「祝意」を示すこと自体からして対中強硬の本気度が疑われる。

なぜ祝福ムード満開の春節大晦日に?

日本時間の2月11日、バイデン大統領がようやく習近平国家主席と電話会談をした。1月20日に大統領に就任して以来、「カナダ、メキシコ、イギリス、フランス、ドイツ、NATO、ロシア、日本、韓国、オーストラリア、インド」に次いで12番目の国になる。

ロシアや韓国よりも後にしたのは、一見、「どれくらい自分は中国を重要視していないか」、「どれくらいトランプ政権同様に対中強硬であるか」をアメリカ国民に見せるためだったと解釈することができる。いや、そう解釈してほしいと望んだが故に、ここまで中国の順番を遅らせたのだろう。

しかし挙句の果てに、結局は中国にとっての「おめでたい春節」除夕(大晦日)の日に電話するとは何ごとか。この日は中国人なら誰もが互いに最も祝福し合う日で、この日に「ご挨拶」されたら、喜ばない人はいない。

わざわざその日を選んで「春節のお祝いを先ず言う」という、「祝福の言葉」から電話会談が始まった。

そのことからして、何とも「対中強硬の本気度」が疑われるではないか。

案の定、バイデンの最初の言葉は「中国人民に丑年の春節のお祝いを申し上げるとともに、中国人民の繁栄と発展を祝福したい」だったと中国側は報じている。

習近平はそれに対してバイデンの大統領就任を再び祝福した上で、「中米両国人民の春節をお祝いし、丑年の吉祥を祈る」と返している。

さて、それでは会談内容に関する米中両国のそれぞれの公式報道を見てみよう。

アメリカ側の公式発表

アメリカ時間の2月10日、ホワイトハウスのウェブサイトは、以下のように米中首脳電話会談の内容を報道している。

1.バイデン大統領は、アメリカ国民の安全、繁栄、健康、生き方を守り、自由で開かれたインド太平洋を守ることを優先事項とすると断言した。

2.バイデン大統領は、 北京政府の強圧的で不公正な経済慣行、香港での取り締まり、新疆ウイグル自治区での人権侵害、台湾を含む地域でのますます強まる独断的な行動について、強い懸念を抱いていると強調した。

3.両首脳はまた、COVID-19パンデミックへの対応や、世界の健康安全保障、気候変動、兵器拡散防止といった課題についても意見交換をした。

4.バイデン大統領は、もしそれがアメリカ国民と同盟国の利益を促進する場合には、実用的で結果を重視した取り組みを追求すると決意表明した。
以上のことが淡々と短く書いてある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中