最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスが、インドの離島に孤立した総人口50人の先住民を襲う

2020年9月11日(金)16時50分
松岡由希子

先住民の大アンダマン人の総人口50名のうち10名が感染した...... YouTube

<新型コロナウイルスは、インド本土から東1200キロ、アンダマン・ニコバル諸島の少数先住民にも影響をおよぼし、50名あまりの総人口のうち10名が感染した...... >

人口13億人超を擁するインドで、新型コロナウイルスの感染拡大が広がっている。2020年8月31日から9月6日までの1週間で約60万人もの新規陽性者が確認され、累計感染者数は米国に次いで世界で2番目に多くなっている。

インド本土を中心に広がり続ける新型コロナウイルスの感染拡大は、インド本土から東1200キロ、インド洋のベンガル湾南部に位置するアンダマン・ニコバル諸島の少数先住民にも影響をおよぼしている。

先住民の大アンダマン人50名のうち10名が感染

8月下旬、先住民の大アンダマン人10名が相次いで新型コロナウイルスに感染した。大アンダマン人の総人口はわずか50名あまりであることから、人口の約2割が新型コロナウイルスに感染したことになる。感染者のうち6名にはそのエリアの中心のポートブレアに出張した行動履歴があるが、4名は島から離れていないという。なお、9月8日には、感染者全員が回復している。

大アンダマン人は、英国がアンダマン・ニコバル諸島を植民地化した1850年代には総人口が5000人を超え、この地域で主要な部族であったが、梅毒などの性感染症が持ち込まれ、結核の蔓延やアルコール依存症の増加などにより、わずか150年で100分の1にまで人口が激減した。

アマゾンの先住民でも深刻な問題になっている

アンダマン・ニコバル諸島には、大アンダマン人のほかにも、約120名のオンゲ族や約520名のジャラワ族、238名のションペン族、外部との接触を拒否する生活を続ける150名のセンチネル族が暮らしており、新型コロナウイルスへの感染リスクが懸念されている。孤立した生活を送る人々は、外部の疾病への免疫を持っている可能性が低いことから、常に外部の疾病に脆弱だ。アンダマン・ニコバル諸島の当局は、外部から島への立ち入りを制限し、島民が島を離れる際には、定期的な検査を義務づけている。

●参考記事
北センチネル島で米国人宣教師が先住民に弓矢で殺害された

アンダマン・ニコバル諸島の少数先住民と同様に、南米のアマゾン熱帯雨林地帯で暮らす先住民においても、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な問題となっている。アマゾン熱帯雨林地帯の組織で構成されるネットワーク「REPAM」の調査データによると、9月8日時点で先住民のうち5万5659名が新型コロナウイルスに感染し、1734名が死亡している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中