最新記事

ポストコロナを生き抜く 日本への提言

食と健康の時代に答えをくれるのは「日本」

THE ERA OF FOOD AND HEALTH

2020年5月11日(月)16時40分
デービッド・ブーレイ(NYの名門フレンチ「ブーレイ・アットホーム」オーナーシェフ)

和食は免疫力を高めるとブーレイは称賛する YUUJI/ISTOCK

<発酵食品文化や食材への敬意――。日本料理はコロナ危機でさらに発展し、世界に広がるだろうと、NYの著名フレンチシェフ、デービッド・ブーレイは言う。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

ニューヨークの著名フレンチシェフ、デービッド・ブーレイ(66)は早くから和食の要素を取り入れ、食と健康の関係も研究。2016年には日本政府から「日本食普及の親善大使」に任命された日本通だ。新型コロナウイルスで大打撃を受けているニューヨークから、ジャーナリスト・北丸雄二のインタビューに答えた。

◇ ◇ ◇

2020050512issue_cover_200.png──ニューヨークの現状は?

事実上全てのレストランが閉まっている。営業はデリバリーとテイクアウトだけ。政府からの休業補償や無利子ローンもあるが、給付金として受け取るなら再開時に従業員の80%を保持していなくてはならない。同じ規模を維持できるか分からないから、どの経営者も迷っている。

実はニューヨークのレストラン業界は今年に入って不況になり、有名店などの閉店も続いていた。時給15ドルの最低賃金の導入や家賃高騰が原因。そこにウイルスだ。ホテル大手のヒルトンも閉まった。再開できないかもしれないとさえ噂されている。私の店も従業員50人を解雇した。

──日本料理店はどうか。

不況に日本料理店はあまり影響されていない。林立する高級スシバーこそ人気に陰りが見えてきたが、懐石割烹や精進料理店は元気だった。

──和食にはまだ発展の余地が?

このコロナ危機でさらに広がると思う。人間の免疫システムには母親から受け取る受動免疫、ワクチンや疾病体験から得られる獲得免疫、人間の肉体が生来的に持っている自然免疫がある。和食にはこの自然免疫力を高める働きがある。

海からの各種ミネラルに加え、抗酸化物質もヨモギに含まれるものはブドウの皮より多い。さらには発酵食品に含まれる乳酸菌など各種の微生物も、人間本来の健康システムをさらに強く活動させるものだ。ヨーロッパにも発酵文化があるが、日本のものはもっと深い。西洋料理は免疫システムを減衰させてしまいがちで、だから薬やサプリメントに頼らざるを得ない。

──とはいえ、日本でも食べ物の西洋化が進んでいる。

ここ数年日本へ定期的にリサーチに行っているが、確かにコンビニフードや既製食品も多い。けれど、日本のフレンチやイタリアンの店では畑や海から来る食材の質の高さ、扱い方の素晴らしさに驚く。西洋料理の現場でさえ、食材に対する日本人らしい敬意がある。日本人はあまり気付いていないかもしれないが、そういう「日本」をもっと意識して西洋にアピールすべきだと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中