最新記事

投資

暴落しても人気衰えぬトルコリラ 個人投資家が支持、東京市場で主要通貨入り

2018年9月15日(土)10時03分

9月14日、8月の大暴落にもかかわらず、日本の個人投資家の間でトルコリラが引き続き人気だ。主要国通貨を大きく上回る高金利が魅力だが、外国為替証拠金取引(FX)業者の積極的な営業姿勢も見逃せない。2018年8月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

8月の大暴落にもかかわらず、日本の個人投資家の間でトルコリラが引き続き人気だ。主要国通貨を大きく上回る高金利が魅力だが、外国為替証拠金取引(FX)業者の積極的な営業姿勢も見逃せない。東京外為市場の対円取引高では5位に浮上。もはや主要通貨の一角だが、リスクも大きいだけに売買には注意も必要との指摘もある。

東京市場「第5の通貨」

東京外国為替市場委員会によると、今年4月中に東京市場で行われたトルコリラの対円取引高は、1営業日平均で39億8000万ドル(約4450億円)。対米ドルの2469億ドル、対ユーロの332億ドルには及ばないが、対豪ドルの108億ドル、対英ポンドの103億ドルに次ぐ5位となった。

2017年4月は10億6000万ドルで、1年で約4倍に膨らんだ。主要通貨と位置づけられているカナダドルやスイスフラン、NZドルなどを上回る規模となっている。

その売買の大半は、証拠金取引と投資信託を経由した個人マネーとされる。貿易統計によると、2017年の対トルコ貿易は輸出が28位の3546億円、輸入は59位の711億円。1年分の輸出入を合計しても1日当たりの取引高にすら及ばない。

市場では、東京の実際のリラ取引額はもっと巨額との声が大勢。特に証拠金取引は業者と金融機関が運営する為替売買システムが直結していることが多く、「日本の個人の売買の一部が(売買システムが実在する)ロンドン市場で計上される」(外銀幹部)ことが少なくないという。

FX業者側の事情も

人気の理由は無論その高金利。10年国債利回りはピークから下がったとはいえ足元で約18%。米国の2.9%、日本の0.11%とは雲泥の差だ。

トルコリラで人気を集めるトレイダーズ証券が運営する「みんなのFX」。1万通貨単位、現在のレートで18万円程度投資すると、スワップポイントと呼ばれる金利差収入が日々100円前後得られる。米ドルでは113万円投資しても44円にとどまる。

南アフリカランド等それなりに高金利の新興国通貨もある。その中でトルコリラ人気が一歩リードしているのはFX業者側の事情もあるようだ。

外為市場では2月に米国株が過去最大の下げを記録した後、年央にかけて変動率が次第に低下。ドル/円は4月以降、108─113円のレンジ内で値動きが鈍り、主要通貨の合成予想変動率を示す指数も年初来最低水準で推移し続ける「なぎ相場」が続いた。

頭を抱えたのがFX業界。値動きが見込めないと個人が取引を控えれば収益源が失われるため「動かないなら高金利」と顧客にPRした。

「FXは自転車操業。新規の顧客をどんどん入れないといけない。そのためには具体的な商品性を訴える必要があり、南アランドやメキシコペソといった既に知られている高金利通貨とは違ったリラの目新しさが良い訴求ポイントになった」(FX会社幹部)という。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、USスチール買収「強い意志でできるだけ早

ワールド

プーチン氏「ロシアを脅かすこと容認せず」、対独戦勝

ワールド

中国輸出、4月前年比+1.5% 輸入と共にプラス転

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中