最新記事

朝鮮半島

統一は「かなわぬ夢」? 南北朝鮮がドイツになれない理由

2018年5月7日(月)10時32分


3つのノー

韓国では、統一を支持する世論も低下している。韓国政府系シンクタンク・韓国統一研究院(KINU)の調査によると、2014年には70%近くが統一が必要と回答したのに対し、現在は58%に低下している。1969年に政府が実施した別の調査では、90%が統一を支持すると答えていた。

統一した場合、韓国が被る経済的損失は大きすぎると、首都ソウルの男性会社員(35)は言う。

「統一には大反対。同じ民族だからという理由だけで統一すべきとは思わない。現在の緊張状態から開放されて暮らしたいだけだ」

敵対意識を緩和するには、「政府は、中国や日本のような平等な隣国として北朝鮮を認識すべきだ」とこの男性は語った。

統一にかかる費用は最大5兆ドル(約550兆円)と試算されており、そのほとんどが韓国の肩にのしかかることになる。

昨年7月にベルリンで行ったスピーチの中で、文大統領は「朝鮮半島平和構想」について説明。北朝鮮の崩壊を望まない、吸収による統一を追求しない、人為的な方法による統一を追求しない、ことを明らかにした。

「求めているのは平和だけだ」と、同大統領は語った。

最重要課題

両国とも、統一についてそれぞれの憲法で明記しており、北朝鮮は「国家の最重要課題」と表現している。

韓国統一省のように、北朝鮮にも「祖国平和統一委員会」がある。北朝鮮からの報道を集めたウェブサイト「KCNAウオッチ」の記事をロイターが分析したところによると、国営メディアは2010年以降、統一について2700回以上言及している。

北朝鮮は1月、声明で「国内外にいる全ての朝鮮人」に共通の目的を目指すことを呼びかけ、「お互いの誤解と不信感を払拭(ふっしょく)し、全ての同胞が自身の責任と国家統一の原動力という役割を果たすべく、南北間における連絡や移動、協力や交流を広範囲で可能にしよう」と訴えた。

北朝鮮人は、韓国にいても北朝鮮にいても統一を支持しているようだ。韓国にいる脱北者の95%以上が統一を支持すると回答している。

北朝鮮「建国の父」である金日成主席は1993年、祖国統一のための「10大綱領」を発表。その中には、国境は開放しつつ、2つの政治体制を残す提案が含まれていた。

北朝鮮は1970年代まで、憲法でソウルを首都と主張していた。一方、韓国は現在に至るまで、北朝鮮に占拠されたままだとする「以北五道」に象徴的な知事を任命している。

「統一は結局、非核化であろうと人権問題であろうと、あるいは、単に南北間で安定したコミュニケーションを築くことであろうと、喫緊の短期目標の多くを達成困難にする」と、韓国シンクタンク「峨山(アサン)政策研究所」のベン・フォーニー研究員は語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英EU離脱は貿易障壁の悪影響を世界に示す警告=英中

ワールド

香港国際空港で貨物機が海に滑落、地上の2人死亡報道

ビジネス

ECB、追加利下げの可能性低下=ベルギー中銀総裁

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、政局不透明感後退で 幅広
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中