最新記事

アメリカ社会

セクハラ告発急増 和解時に公表を禁じる「秘密保持契約」の是非

2018年1月5日(金)10時24分

12月19日、元アシスタントにセクハラの告発をされたハリウッドの映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏。2016年にニューヨークで撮影(2018年 ロイター/Mike Segar)

社会的に重要な立場にある男性による性的な不品行に対する告発が相次いでいることを受けて、弁護士たちは、長年にわたって使われてきた秘密保持契約を含め、こうした事件への対応を再考しつつある。

声を上げる女性(ときには男性も)が増えるなかで、被害者が過去のハラスメントや虐待の主張を話題にすることを禁じる秘密保持契約(NDA)を伴う和解が批判にさらされている。多くの政治家・啓発団体が、そうした協定は廃止すべきだと主張するようになったからだ。

ハラスメント事件で原告・被告を代理する弁護士らによれば、これまでは、仮に疑問視される場合があっても、裁判所はNDAを支持することが当たり前だと考えられており、NDAに対する違反もめったに生じなかったという。だが今や、こうした合意は公益に反するものとして裁判所が無効を宣告する可能性が高まっている。

「昨今では、NDAによる権利の執行可能性に自信を持っている弁護士がいるとすれば驚きだ」と語るのは、企業側の弁護を専門とする法律事務所プライヤー・キャッシュマンで雇用法部門を率いるロン・シェヒトマン氏。

複数の弁護士によれば、現在では、セクハラなどで訴えられた企業幹部や著名人に対し、自己弁護や告発の棄却をめざすよりも、辞任することを勧める可能性が高くなっているという。最近でも、複数の男性がこうした道を選んでいる。

だが弁護士らによれば、秘密保持契約の効果が弱まることは、告発する側にも影響を与える可能性があるという。秘密保持契約がない方が、和解金は少額になる可能性がある。少なくとも一部のケースでは、秘密保持契約によって、性的不品行を告発された男性が、自身に対する申し立てを勘違いして捉えることを防げる場合もある。

訴訟を進めるなかで、依頼者が何をめざすかによって、与えるアドバイスが変わってくる可能性がある、と原告側の弁護士は言う。ニューヨークのダグラス・ウィグダー弁護士は、公表することにより、ハラスメント加害者が新たな被害者を生み出せないようにすることを望む依頼者もいる、と話す。しかし、その他の依頼者は「加害者側と同じくらい、秘密保持契約を求める」という。

こうした合意が実現するのは、性的不品行の告発に関して訴訟を起こしている、または起こすことを示唆している場合に限られる。現在、ハラスメントを受けたことを明らかにしている女性たちの多くは、告訴していないし、またその予定もない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド西部で離陸直後市街地に墜落、死者多数 英国行

ビジネス

ECB金利は適切な水準、インフレ低下は一時的=シュ

ビジネス

独主要シンクタンク、25年成長率を上方修正 財政拡

ワールド

IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中