アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾートで中印の富裕層狙う

8月26日、スリランカは長年にわたり、手つかずの自然が残るビーチや野生動物が見られるサファリ、古代仏教遺跡が観光の目玉だった。写真はコロンボのシティ・オブ・ドリームズで25日撮影(2025年 ロイター/Thilina Kaluthotage)
Uditha Jayasinghe
[コロンボ 26日 ロイター] - スリランカは長年にわたり、手つかずの自然が残るビーチや野生動物が見られるサファリ、古代仏教遺跡が観光の目玉だった。しかし、マルクス主義の流れをくむ同国初の大統領となったディサナヤカ氏は、カジノ産業を興してインドや中国からの富裕層を呼び込み、外貨流入の新たな波を起こそうと賭けに出ている。
カジノ戦略の成功は9月に大統領就任から1年を迎えるディサナヤカ氏にとって極めて重要な意味を持つ。スリランカは2022年と23年に経済崩壊に見舞われ、ディサナヤカ氏は一般市民の生活を改善すると公約している。
スリランカにはこれまでに小規模なカジノはいくつか存在していたが、今月上旬には最大都市コロンボで12億ドル規模に達する統合型カジノリゾート「シティ・オブ・ドリームス」がオープンした。
シティ・オブ・ドリームスは国内最大の財閥ジョン・キールズ・ホールディングスとマカオを拠点とするメルコ・リゾーツ&エンターテインメントによる合弁事業で、統合型の開業は南アジアで初めてとなった。開業イベントではボリウッドの人気俳優リティク・ローシャンさんが満員の観客の前でヒンディー語のヒット曲に合わせて踊り、話題をさらった。
ディサナヤカ氏はカジノなどのギャンブルを規制する法律も議会で成立させており、カジノ産業に大きな期待を寄せていることが読み取れる。
ラナシンハ観光副大臣はロイターの取材に対し、こうした取り組みは今年の観光客数を前年比50%増の300万人とし、観光収入を昨年の37億ドルから50億ドルへ押し上げるという目標の一環だと説明。「観光はわれわれが抱える経済問題からの脱却で非常に重要な役割を果たす。この数年の短期的目標では人の流れを重視するが、長期的には質の高い、より持続可能で高級志向の観光を目指しており、カジノやギャンブルもその一部になる」との見方を示した。
スリランカの観光業は昨年の国内総生産(GDP)に占める割合が約4%となり、政府は最終的にこれを10%まで引き上げる方針だ。一部は高級志向のゲーミングが担う見通しだという。観光業はスリランカにとって出稼ぎ労働者の本国送金、アパレル輸出に次ぐ第3の外貨獲得源となっている。
スリランカ中央銀行が今月発表した今年の成長率見通しは、観光業の堅調を踏まえて約4.5%となり、4月時点の世界銀行予想の3.5%を大きく上回った。
スリランカの年間GDPは約990億ドル。国際通貨基金(IMF)から29億ドルの支援を受けるまで2年間にわたり大幅な経済縮小に苦しみ、昨年になってプラス成長に戻ったばかりだ。2022年には対外債務のデフォルト(不履行)に陥り、28年から債務返済を再開する必要がある。
<大きな期待>
コロンボの海岸沿いに建てられたシティ・オブ・ドリームスは800の客室、高級品を扱うモール、会議施設等を備えており、投資家は富裕層の利用を見込んでいる。
メルコのローレンス・ホー会長兼最高経営責任者(CEO)は「(スリランカは)全く新しい市場だ。これまでにマニラ、マカオ、キプロスで市場を開拓してきたが、それらと同じだ」と説明。「この国の観光の潜在力、そして統合型リゾートにおけるゲーミングの潜在力については、まだ表面をかすった程度にすぎない」と事業拡大に意欲を見せた。
ラナシンハ氏は、今後10年間は主な観光客がインド人になると見込んでいる。人口が世界最多のインドではカジノがごく一部の指定地域でしか認められていない。また、中国では合法的なカジノの営業はマカオに限られている。
昨年にスリランカを訪れた観光客200万人のうちインド人がほぼ4分の1を占め、中国人は7%。スリランカはインド、中国の政府と緊密な経済関係を維持しており、両国民は査証(ビザ)なしでスリランカに入れる。
スリランカ議会は先週、歳入の拡大と責任あるギャンブルの推進を目的にギャンブル規制局を創設する法案を可決した。ただ、この法律は、財務相に広範な権限を与える一方で、国営宝くじを監督対象から除外し、観光業界の代表が当局に含まれず、違反に対する罰則が軽いなどの点が専門家から批判を浴びている。
一方、政府は同法が社会的な害悪を減らし、雇用を増やしてカジノ産業を促進するのに不可欠だと主張している。
ラナシンハ氏は「これまでもスリランカやコロンボにギャンブルはあったが、規模はそれほど大きくなかった。シティ・オブ・ドリームスの開業で世界中から顧客がスリランカにも来ると信じている」と期待感を示した。