最新記事

北朝鮮の飢きんが生んだ「人造肉」 闇市と人民の工夫がつなぐ命

2017年11月9日(木)16時45分


平壌でピザ

他の国々のように、北朝鮮の富裕層には選ぶ自由がある。首都平壌の住民は、市内に数百件あるレストランからピザを注文することができると、定期的に同国を訪れる外国人たちは言う。

飲食店の多くは国有企業によって経営されている。一部の店は、かつては観光客向けだったが、今では北朝鮮人にも開放し、ドルやユーロといった外貨を稼ぐ店が増えているという。

例えば、「光復通りのイタリアン」として有名なレストランでは、住民も西側の観光客も料理の価格は同じで、ボンゴレパスタは3.5ドル(約400円)、ペパロニピザは10ドルとメニューにある。一方、市場では、トウモロコシは1キロ当たり30セント、インジョコギ1人前は50セントで売られている。

北朝鮮経済が変わるにつれ、カネのある中間層の嗜好も変化し、新しい食べ物への欲求が高まっている。国営メディアによれば、金正恩・朝鮮労働党委員長は国産品をもっと増やすよう求めている。

北朝鮮では、菓子やスナック、キャンディーの国内生産が増えている。同国は詳しい輸入データを公表していないが、中国のデータによれば、今年1─9月に北朝鮮向けの砂糖輸出は4万4725トンに急増した。2016年は1236トン、2015年は2843トンだった。これは、中国の砂糖輸出の約半分に相当する。

北朝鮮は砂糖を生産していない。

その一方で、今年1─9月の北朝鮮向けトウモロコシ輸出も5万トン近くに急増したと中国のデータは示している。2016年は通年でわずか3000トン余りだった。

デイリーNKの記者たちは週に数回、北朝鮮の情報筋に電話し、コメやトウモロコシ、豚肉や燃料の市場価格、そして北朝鮮通貨ウォンの市場相場を確認している。公式レートは1ドル100ウォン程度であるのに比べ、市場では1ドル約8100ウォンで取引されている。

同メディアの報道によると、これまでのところ、ガソリンやディーゼルの市場価格は、国連が追加制裁決議を採択して以来、2倍に跳ね上がっている。それに比べると、コメとトウモロコシの価格はそこまで激しく値上がりしていないという。ロイターはこれら報道を独自に確認できなかった。

北朝鮮の国民が食糧を補う方法は他にもある。

「私の父はよく賄賂を受け取っていた」と、Kangという名字だけ明かした28歳の脱北者の女性は言う。この女性は北朝鮮に父親を残して2010年後半に脱北した。

父親は地位の高い官僚で、ヤギや犬やシカの肉などの賄賂を受け取っていたと女性は語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

James Pearson and Seung-Woo Yeom

[ソウル 3日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変

ワールド

サルコジ元仏大統領を収監、選挙資金不正で禁固5年

ビジネス

米GM、通年利益予想引き上げ 関税の影響見通し額下

ワールド

ウクライナ北部で停電、ロシア軍が無人機攻撃 数十万
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中