最新記事

教育

定員割れ私大に倒産回避の「イエローカード」 少子化で文科省が検討

2017年9月12日(火)14時39分

9月12日、文部科学省は、経営悪化が著しい私大に対し、事業撤退を含めた早期の是正勧告をできるような制度改正の検討に入った。写真は大学生達。都内で3月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

文部科学省は、経営悪化が著しい私大に対し、事業撤退を含めた早期の是正勧告をできるような制度改正の検討に入った。複数の関係筋によると、少子化に伴う学生の定員割れが深刻化し、4割の私立大学が赤字経営に転落。「大学倒産」で学生に影響が出かねないと判断したからだ。具体的には経営改善策を促す「イエローカード」の財務基準を定める方向だ。中央教育審議会の中間答申も踏まえ、今年末にはある程度の結論を得たい考えだ。

文科省の外郭団体である日本私学振興・共済事業団によると、2015年度末に全国の私大596校のうち40.8%にあたる243校が、授業料を含む事業活動収入よりも経費が上回る赤字経営に直面している。このうち赤字幅が事業活動収入の20%以上にのぼる大学が89校に上っていた。

背景には、少子高齢化に伴う18歳人口のはっきりした減少傾向がある。2005年に約137万人だったが、2017年に約120万人に減少。さらに2032年に約98万人となり、2040年には約88万人まで縮小するとの試算がある。

政府部内の複数の文教関係者は「大学法人の経営悪化が、本格化するのはこれからだ」と指摘する。

そこで、負債額が膨大な規模になる前に大学に対して警告を発し、早期に経営を是正させる「イエローカード」制度の導入について、文科省は検討を始めた。

具体的には、日本私学振興・共済事業団が策定した大学経営の状態を自己判断できるフローチャートを利用。このフローチャートでは、赤字継続年数や負債超過の状態などからレッドゾーン、イエローゾーン、正常状態の3つのゾーンに大学をランク付けする。

このうち、経営危機が深刻化するリスクの高い大学には、バランスシート上の指標を用いて「退場」を勧告できるような仕組みも検討する。

この新システムと同時に、文科省は私学助成金の配分の見直しも検討している。

総額3200億円程度の私学助成金は、大学の規模や経営指標に応じた現在の配分から、教育の「成果」に応じた配分とすることが、2017年度の政府の「骨太方針」に盛り込まれた。

欧米のように学生の成績向上や卒業後の年収などを可視化し、助成金の傾斜配分を行うべきとの発想だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時急落、154円後半まで約2円 介入警戒の売

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、3月も低調 家計向けは10年ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中