最新記事

アメリカ政治

ロシアの大統領選介入疑惑、長官解任でFBIの捜査の行方は?

2017年5月11日(木)16時14分

5月10日、トランプ大統領が米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を9日解任したことで、FBIによるロシア疑惑の捜査の今後を危ぶむ声が出ている。写真は3月17日、米下院情報委員会の公聴会で証言するコミー氏(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ大統領が米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を9日解任したことで、ロシアによる昨年の大統領選に対する介入や、トランプ陣営との癒着の可能性を調べてきたFBI捜査の今後を危ぶむ声が出ている。

民主党は、長官解任によりFBI捜査が行き詰ることを恐れており、独立捜査を改めて要求。共和党議員からも、上院と下院が行っている調査に影響が出るのではないかとの指摘が出ている。

今後予想される展開は以下の通り。

●現在のFBI捜査は継続

法律専門家によると、コミー長官の解任は、FBIによる米大統領選へのロシアの介入疑惑捜査の中断や終結を必ずしも意味しない。後任の人選が進むあいだにも、コミー氏が任命したキャリア捜査官がFBI捜査の指揮を続ける可能性が高い。

上院と下院の情報特別委員会で平行して進められている調査も同様に継続する可能性が高い。

●司法省や他の省庁、または議会による独立捜査

司法省には犯罪捜査を行う権限がある。一方、他の連邦省庁は、事実確認のための調査を行うことができると南カリフォルニア大のサム・エルマン教授は指摘する。議会も特別委員会を設置したり、議会調査とは別に、(調査を行う)スペシャル・マスターを任命することができるという。

●司法省が、特別検察官を指名

刑事訴追の権限を持つ省庁は司法省だけであるため、司法省から任命された特別検察官による捜査を求める声が民主党から上がっている。

旧制度の特別検察官(special prosecutor)の任命に関する法律は1990年代に失効した。現在は、司法省の規定で、司法長官が連邦政府の外から特別検察官(special counsel)を任命することができる。

ロサンゼルスのロヨラ法科大学院のジャスティン・レビット教授によると、司法長官が特別検察官の提言を無視した場合、同検察官は規定により議会に報告書を提出しなければならない。

司法長官はまた、省規定によらない形で、専門家を雇って特別検察官の職務を行わせることができる。2003年に情報機関の工作員の身分が漏えいされた事件で、こうした形の捜査が行われた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中