最新記事

米軍

米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯

2017年4月19日(水)19時26分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

米原子力空母カール・ビンソンのフライトデッキ(4月8日撮影) U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Matt Brown/Handout via REUTERS

<挑発を続ける北朝鮮に対する威嚇のため朝鮮半島近海へ向かっていたはずのカール・ビンソンが、実は逆方向に向かっていた――。衝撃的なニュースが伝えられたが、なぜこんなことになったのか>

シンガポールから朝鮮半島近海へ向かっていたはずの米原子力空母カール・ビンソンが、実は逆方向に航行していたことが4月19日までにわかった。この1週間、北朝鮮情勢は緊張が高まっており、米朝戦争突入かとまで騒がれてきたのに、いったい何が起こっているのか。

CNNは、国防総省とホワイトハウスの間に連絡ミスがあったとの見方を伝えている。これだけ緊迫した状況下で本当にミスだったのか。ドナルド・トランプ大統領が得意とする「ディール(交渉)」の一環で流した錯乱情報なのか。日本や韓国の当局者は知らされていたのか――。

謎は多く、日本時間19日午後6時現在でまだはっきりした原因はわかっていないが、スレート誌の記事などを参考に、これまでの経緯を振り返る。

■1月5日
カール・ビンソン(搭載機数90機)を中心とする第1空母打撃群が、予定どおり米西海岸のサンディエゴから西太平洋に向けて出港。他にミサイル駆逐艦のウェイン・E・マイヤー、ミサイル巡洋艦のレイク・シャンプレインなどで編成されている。

■4月5日
北朝鮮が弾道ミサイル1発を日本海に向けて発射。

■4月6~7日
フロリダ州パームビーチで米中首脳会談。トランプ大統領と習近平国家主席は北朝鮮問題について議論したとみられている。

■4月6日
米軍がシリアの空軍基地を攻撃。アサド政権が反体制派の拠点地域で化学兵器を使用したとみられることへの対抗措置で、59発の巡航ミサイルを撃ち込む。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩政権に対するメッセージでもあるとされていた。

■4月8日
シンガポールを出港したカール・ビンソンを中心とする打撃群が、オーストラリアに寄港する計画を変更し、北上して西太平洋へ向かうよう命じられたとの米太平洋軍司令部の発表をCNNが報じる。「西太平洋でのプレゼンス」を高め、「地域の最大の脅威である」北朝鮮に対する牽制が目的と米軍当局者は語っていた。

これを機に、日本を含む各国で朝鮮半島危機に関する報道が過熱していく。

■4月11日
ジェームズ・マティス米国防長官が記者会見で「特定の要求や理由があるわけではない」としつつも、カール・ビンソンが「西太平洋に展開されているのには理由がある」と説明。オーストラリア海軍との合同演習は中止になったと発言(後に国防総省が、中止されたのは演習ではなくオーストラリアへの寄港だと訂正)。

ショーン・スパイサー米大統領報道官も、カール・ビンソンは「日本海方面へ向かっている」と発言。

アメリカによる先制攻撃の兆候があれば米本土にも核攻撃すると、北朝鮮が機関紙で警告。

【参考記事】北朝鮮に対する軍事攻撃ははじまるのか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イーライリリーの経口肥満症薬、2型糖尿病患者で体重

ビジネス

積極利下げの用意、経済の下振れ顕在化なら=マン英中

ビジネス

スズキ、EV強化へ80億ドル投資 インドの生産体制

ワールド

米政府、防衛関連企業への出資を模索する可能性=商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    トランプ、ウクライナのパイプライン攻撃に激怒...和…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中