最新記事

ゲーム

「スイッチ」で任天堂はよみがえるか

2017年3月24日(金)10時30分
ジョン・ガウディオシ

任天堂が社運を懸けるスイッチ(写真は携帯モード)の滑り出しは好調 Kim Kyung-hoon-REUTERS

<約4年半ぶりに新型機「ニンテンドースイッチ」を発売した任天堂。Wiiがかけたゲームの魔法を復活させられるか>

マリオやドンキーコングはパワーアップして、セガがたどった破滅の道から任天堂を救うことができるのか?

任天堂は3月初めに世界同時発売した「ニンテンドースイッチ」に社運を懸けている。WiiU以来、約4年半ぶりに発売する据え置き型ゲーム機だ。

熾烈な競争が繰り広げられる世界のゲーム市場で、任天堂はゲームオーバー寸前だった。01年発売のゲームキューブの人気は散々で、多くの専門家が「任天堂はもう終わり」と書き立てた。06年に発売したWiiは体を使って遊ぶスタイルでゲームに革命を起こしたものの、12年発売のWiiUでは有名キャラクターのゲームソフトを投入せず、任天堂は再び瀕死の状態に。

それが今、ニンテンドースイッチで「リセット・ボタン」を押している。この新型ゲーム機はテレビに接続する「TVモード」、持ち運べる「携帯モード」、スタンドを使う「テーブルモード」の切り替え(スイッチ)ができ、価格は300ドル(2万9980円)。一度の充電で3~6時間持つ。

目玉はコントローラーの「ジョイコン」。本体の左右から取り外せば、2人で遊ぶことができる。対戦格闘ゲーム「ARMS」の場合は左右の手に持ち、画面の中のキャラクターの腕の動きをコントロールする。

【参考記事】プライバシー保護がスナップチャットの成長戦略

カギとなる開発者の支持

28種類のゲームを収録するソフト「ワン・ツー・スイッチ」でも、コントローラーは独創的に使われる。このソフトが面白いのは、ビデオゲームからビデオをなくしたこと。例えば「ピンポン」では2人のプレーヤーが見えない卓球台を挟んで対戦。リアルな触感を再現する「HD振動」と音によって、見えない球が行き来するのを感じる。

任天堂オブ・アメリカのレジナルド・フィサメCOOは説明する。「動きを指示するためにテレビ画面が『あなたに話し掛け』、得点を記録し、誰が勝ったかを知らせる。誰が勝ちそうかといった画面の表示内容が見えるのはプレーをしていない人だけ。見学している人もゲームに参加している感覚が増えた。つまり一緒に遊ぶという点で、新しいゲームの在り方だ」

スイッチの初回出荷台数は全世界で200万台。滑り出しは好調だ。ターゲットは多くのゲームオタクたちだが、家族同士で遊び、年配のゲーマーも楽しめるように「いっしょにチョキッとスニッパーズ」のようなソフトも用意した。「スニッパーズ」は「スニップ」と「クリップ」というキャラクターを操作して、パズルを解いていくもの。最大4人まで一緒に遊べる。

ようやく任天堂が、ゲーム製作者たちをもう一度わくわくさせてくれたようだ。スイッチ向けには、60社以上のゲーム販売会社や開発会社が100種類以上のゲームを製作中。任天堂と初めて仕事をする会社もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P、米信用格付けを据え置き 「関税収入が財政赤

ビジネス

BHP、鉄鉱石安で年間利益5年ぶり低水準 配当好感

ビジネス

実質マイナス金利の長期化「良いと思えず」、脱却する

ビジネス

タイ、外国人観光客向けに仮想通貨・バーツ決済の試験
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中