最新記事

ヨーロッパ

トランプごときの指示は受けない──EU首脳が誇り高く反論

2017年1月17日(火)16時29分
ジョシュ・ロウ

ドイツ車も国境税の標的に(写真はフォルクスワーゲンのゴルフ) Fabrizio Bensch-REUTERS

<トランプの批判の矛先が遂にヨーロッパへ。難民受け入れは「破滅的」、NATOは「時代遅れ」という罵詈雑言に、誇り高い欧州首脳が反論>

 ドイツ政府が、ドナルド・トランプ米次期大統領に反撃した。トランプがドイツの難民政策を批判し、同国の自動車産業を威嚇したことに対してだ。

 1月15日夜に公開された英紙タイムズと独紙ビルドによる共同インタビューで、トランプ次期大統領は、メキシコに工場を建設中の独自動車メーカーBMWに対し、アメリカに輸出する自動車に35パーセントの国境税を課す可能性があると述べた。

 同インタビュー内でトランプは、アンゲラ・メルケル独首相も批判している。メルケル首相を尊敬すると話す一方で、同首相が2015年夏に進めた寛大な難民保護政策を「破滅的な過ち」と評し、ロシアと対峙するNATO(北大西洋条約機構)の集団安全保障体制も「時代遅れ」と言った。

【参考記事】米共和党「シリア難民拒否」の根底にある孤立主義
【参考記事】自由主義的な世界秩序の終焉

 ドイツの副首相兼経済・エネルギー相、ジグマール・ガブリエルは1月16日、ベルリンで行われた会見で、BMWに対するトランプの姿勢は見当違いだと述べた。

難民はアメリカにも責任がある

 英紙ガーディアンによると、ガブリエル経済相は、「仮にアメリカ国外で製造される供給部品のすべてに35パーセントの関税が課せられることになれば、アメリカの自動車産業には激震が走る」と指摘した。「何より、自動車が値上がりし販売不振に陥るはずだ。この件については米議会の発言を見守りたい。米議会はトランプと意見を異にする議員が大勢を占めている」

 さらにガブリエル経済相は、多くの西側諸国には、難民危機に対して果たすべき役割があるとも述べた。「アメリカの軍事介入の失敗、特にイラク戦争は、現在の難民危機と無関係ではない」と同経済相は述べた。

「互いの行為について正しいだの間違っているだのと言い合っている場合ではない。難民の故郷で平和を確立する方法を検討し、人々がそこに安住の地を再び見つけられるよう、最善を尽くさなくてはならない」

 以前からトランプを嫌っていたフランスのオランド大統領は、「外からの忠告は必要ない」と切り捨てた。

【参考記事】トランプには「吐き気がする」──オランド仏大統領

 ガブリエル経済相は、トランプが大統領選に就任するいま、ヨーロッパは自立すべきだと言った。「トランプが大統領に就任したら、協力していかなければならない」

「一方で、われわれは自分に自信を持つ必要がある。服従はしないということだ。われわれはトランプのしもべではない。交渉のテーブルでも、アメリカにとって利益となるものを提供することができる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がMRI検査、理由明かさず 「結果は完璧

ワールド

米中外相が電話会談、30日の首脳会談に向け地ならし

ワールド

アルゼンチン大統領、改革支持訴え 中間選挙与党勝利

ワールド

メキシコ、米との交渉期限「数週間延長」 懸案解決に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中