プーチン訪日を批判報道する中国――対中包囲網警戒も

2016年12月19日(月)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 日本では「ロシア向けの配慮に基づいた発言だろう」といなされているが、中国では位置づけが異なっていた。

 読売新聞と日テレの独占取材を大きく取り上げる理由は、まだある。

 プーチン大統領はこの取材で「中国こそが最も重要な国だ」と回答しているのだ。

 それを誇りたくてならない。

 CCTVにおいても何度も報道したが、「2016-12-14 09:54:49」 には、中国政府系メディアの軍事ページで全文を解読した上で「日本メディア、プーチンに中国が最も重要な国かと聞いた  プーチンは当然だと回答した(1)」が、「2016-12-14 16:50:00」には中国共産党系の環球網の「プーチン、日本メディアの取材を受け、何度も中国の名を挙げ:中国はロシアの大切なパートナーだ」という報道が出たのを始めとして、「中国に関して:プーチンは日本に素晴らしい授業をした」(軍事新聞観察)や、「プーチンは取材を受けて言った:中国は彼の心の中で特別の存在だ」などが、次から次へと転載された。

日米安保条約を適用するか――これも日本メディア報道を逆利用

 2016年11月8日~10日の予定で、プーチン大統領訪日の調整をするために、日本の谷内国家安全保障局長がモスクワを訪問。大統領の側近で、安全保障会議のパトルシェフ書記と意見交換をした。

 これに関して12月14日の朝日新聞は以下の報道をしたという(筆者自身は紙面を見ていない)。

 ――複数の日本政府関係者によると、パトルシェフ氏は、日ソ共同宣言を履行して2島を引き渡した場合、「島に米軍基地は置かれるのか」と問いかけてきた。谷内氏は「可能性はある」と答えた。

 朝日新聞の14日付けのこの記事をリアノーボスチ通信が報じたと、Sputnik(スプートニク)日本語が報じた。

 中国はいち早くこの事実に反応。

 というのは、中国では早くから、「もし北方四島のどれかが日本の帰属になった場合、その地は日米安保条約の対象になるのか」という分析が行われていたからだ。

 朝日新聞の報道を受けて、中国メディアは一斉に、「こんな可能性がある島を、日本に返還するなど、あり得ないだろう!」と日本への非難の合唱を始めた。

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