最新記事

中国

インターポールも陥落、国際機関を囲い込む中国の思惑

2016年12月6日(火)10時40分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 11月19日、ペルーでの中ロ首脳会談で習近平国家主席は、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を共に先頭に立って推進しようと、プーチン大統領に呼び掛けた。

 FTAAPはもともとASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が掲げていながら、環太平洋諸国の貿易協定TPPに先行されて実現できなかった。これを中ロが換骨奪胎し、自分たちが主導する貿易ブロックにすり替えようというのだ。

強がるだけのアメリカに

 中国やロシアが主導する国際組織は、西側が主導した場合に比べて政治優先で経済的な中身はおざなりになりがち。日本の政治的・経済的利益に合わない場合が多い。米主導の場合、いくら締め付けがきつくても、日本が法治・アカウンタビリティーの原則を前面に立てると引き下がる。

【参考記事】プーチン年次教書「世界の中心で影響力」を発揮する

 トランプ次期米大統領はTPP反対の立場を崩していないが、TPPができなければ、中国はFTAAPでアジア太平洋を囲い込んでしまうだろう。アメリカは輸出の25%近く 、輸入の35%余りをアジアに依存している。このままでは、トランプの目標とする「強いアメリカ」は「強がるだけのアメリカ」になってしまう。

 日本にとって人権、民主主義、自由貿易は不可欠だ。トランプが考え直すまで、志を同じくする国々と一緒に耐えるべきだ。ASEANが主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のようなアメリカ抜きの場では、自由化度の深化に努める。中国と対抗する必要はなく、日本の利益にかなう方向で協力していけばいい。

 FTAAPやRCEPが十分な内容を備えたものになれば、トランプのアメリカもそのうち保護主義から覚め、加盟を申請してくるだろう。

[2016年12月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中