最新記事

キャリア

管理職が陥る「自分なんて大したことない」症候群

2016年10月20日(木)16時24分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

peshkov-iStock.

<管理職の地位にある多くの人が「インポスター症候群」にかかっているが、対処法はある。不安定でストレスの多い時代を生き抜くための「打たれ強さ」の身につけ方(3)>

 ここ数年、ビジネスの世界で関心を集めている概念がある。「resilience(レジリエンス)」だ。日本語では「復活力」や「逆境力」、あるいは「折れない心」などと訳されるが、そのままカタカナで「レジリエンス」と表記されることも多い。

 会社で出世するなど成功した人ならば、レジリエンスを備えていると思うかもしれないが、そうとは限らない。イギリスのキャリア・ストラテジストであるジョン・リーズによれば、管理職の地位にある多くの人が、自分は幸運だっただけで、本当は仕事に見合う能力などない「まがい物、詐欺師」だと感じているという。

「インポスター症候群」と呼ばれる症状だが、この"心の弱さ"はレジリエンスとは対極にあるものだろう。とはいえ、不安定でストレスの多い現代を生き抜くには「打たれ強さ」が必要だと、リーズは言う。インポスター症候群にもうまく対処できるようにならなくてはならない。

 リーズはこのたび、レジリエンスを習得・開発・強化する方法を伝えるべく、『何があっても打たれ強い自分をつくる 逆境力の秘密50』(関根光宏訳、CCCメディアハウス)を上梓した。50の項目にまとめられた実践的な1冊だ。

 ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第3回は「19 インポスター症候群に対処する」より。なぜ「自分なんて大したことない」と感じてしまうのか、うまく対処するにはどうすればよいのか。


『何があっても打たれ強い自分をつくる
 逆境力の秘密50』
 ジョン・リーズ 著
 関根光宏 訳
 CCCメディアハウス

※シリーズ第1回:レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた
※シリーズ第2回:成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと

◇ ◇ ◇

 あなたは職場で周囲の人をだましていると感じることがあるだろうか? そういう感覚に陥る人は珍しくない。管理職の地位にある多くの人が、非公式ながら、自分の仕事はすべてうわべを取り繕っているだけだと感じている。彼らはこう言っている。「自分が仕事を得たのは幸運だったからで、自分にはこの仕事に見合う能力などないのに、人はそれに気づいていないだけだと思ってしまう。ある日突然、誰かがやってきて、こう言ってくれないかとうっすら期待してしまう。『もういい。君は有能なふりをしているだけの詐欺師だ。机を片付けて今日中に出て行きなさい。これ以上言うことは何もない』。そう言われたら、私は黙って出ていくだろう」

 圧倒的な業績によって実力が証明されているにもかかわらず、自分をまがい物、詐欺師だと感じる「インポスター症候群」が知られるようになったのは1970年代。この症候群に悩まされている人の多さは衝撃的だった。彼らは、自分は今の仕事を誰かほかの人から奪い取った詐欺師であって、この仕事を知り抜いた本物の専門家は別にいると感じる。かなりの要職にある多くの人がこの症状を経験していて、そういう人は自分の業績をただの幸運、チャンスとタイミングに恵まれただけ、周囲の人の働きかけがあっただけ、あるいは事務手続き上のミス(「私を候補者に指名するつもりはきっとなかった」)とさえ言って切り捨てる。そして、自分がなんとか役割をまっとうしているのは、自分が犯したミスが見つかっていないからで、それが見つかるのは単に時間の問題だと言う。

【参考記事】頭が良すぎるリーダーの、傲慢で独りよがりな4つの悪い癖

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が

ビジネス

アングル:替えがきかないテスラの顔、マスク氏後継者

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中