最新記事

ニュースデータ

日本の公務員は先進国で最も少なく、収入レベルは突出して高い

2016年10月5日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

Heiko Kuverling/iStock.

<公共サービスの民間委譲が既定路線となっている日本だが、世界各国と比較すると、日本の公務員数の比率は先進国で最も低い、その分収入は民間より優遇されている>

 筆者の以前の記事「育児も介護も家族が背負う、日本の福祉はもう限界」において、保育を誰が行うべきかという意識の国際比較を行った。その結果、北欧の保育は「公」型、日本の保育は「私」型と性格付けられることがわかった。介護に関しても同様の実態がある。

 保育や介護といった福祉は、あまり民間サービスに委ね過ぎるのは好ましくない。市場原理に委ねると利用料が高額になり、サービスの利用機会に格差が生じる。ぜいたく品と違い、福祉のような生存に関わるサービスの利用機会は公的に保障されるべきだ。

【参考記事】家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇

 社会を成り立たせる事業には、公でしか担えないものもある。どの国でもこういう線引きがされていて、働く人たちの中には公的機関での就業者(公務員)が一定数いる。その割合は国によって大きな差があり、日本はおそらく低いが、旧共産圏の国々ではいまだに高いことが想像される。

 そこで、就業者に占める公務員比率の国際比較をやってみた。2010~14年にかけて、各国の研究者が共同で実施した『第6回世界価値観調査』のデータを用いる。就業者のうち、公的機関で働いていると答えた人の割合を国ごとに計算し、高い順に並べてみた。

maita161005-chart01.jpg

 日本は10.7%で,調査対象の58か国の中では下から2番目だ。公務員比率が1割という日本の現状は、国際的に見ると特異だ。先進国の中でも格段に低い。

 58カ国の平均値は32.6%で、就業者の3人に1人が公務員というのが国際的な標準のようだ。これより高い国は、北欧のスウェーデンが46.2%、旧共産圏の国々では60~70%となっている。

 何から何まで「私」依存、好んで使われる言葉が「自己責任」の日本だが、そんな風潮が就業者の公務員比率にも反映されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中