最新記事

ニュースデータ

家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇

2016年9月21日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

dolgachov-iStock.

<退職後の日本の高齢男性の家事実施率は2.4%と欧米各国と比較すると極端に低い。高齢男性が家事をやらないことは、近年熟年離婚が増加していることとも関連がありそうだ>

 今週19日は「敬老の日」。総務省が今月まとめた統計によると、日本の高齢人口は3461万人で、国民全体に占める割合は27.3%と過去最高を記録した。

 人は誰しも老い、やがては社会の一線から退くことになるが、それに伴い生活も変化する。男性はその変化の度合いが大きく、外での仕事という役割を喪失して、何をするべきか見失った状態に陥る人も少なくない。

【参考記事】未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

 引退後の主な生活の場は職場から家庭へとシフトするが、家庭には家事労働という「仕事」がある。引退後の男性の家事実施率は、少しは上がるだろうと想像するかもしれないが、現実はそうではない。<図1>は、同居者のいる高齢者に「家事を担っているか」たずねた結果だ。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4か国の男女の家事実施率を棒グラフで表している。

maita160921-chart01.jpg

 日本の高齢男性の家事実施率は2.4%と極端に低い。どの国でも、男性は女性より低いが、日本の性差はあまりに大きすぎる。男女平等先進国のスウェーデンでは、その差はほとんどない。

 時間ができるとはいえ、仕事一筋で生きてきた日本の男性が、いきなり家事に勤しむのは難しいようだ。2015年の調査で60歳以上ということは、1955(昭和30)年以前に生まれた世代にあたるので、戦前戦中の性別役割観が染みついているのだろう。妻の側も、夫が家事を分担することをあまり期待していないのかもしれない(夫がやっても二度手間になる)。

 しかし高齢期では夫婦だけの世帯が多くなるため、妻の不満は高まっていく。何もしない夫を横目に、自分だけがいそいそと動き回るのは心中穏やかではない。「定年退職して、家事もしない夫が毎日家にいると思うと気が遠くなる。離婚したい」といった新聞への投稿などから、妻側の心情が見てとれる。最近、熟年離婚が増えているというが、<図1>のグラフをみると「さもありなん」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレなおリスク、金利据え置き望ましい=米アトラ

ビジネス

トヨタ、米に今後5年で最大100億ドル追加投資へ

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中