最新記事

ニュースデータ

家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇

2016年9月21日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

 2011年の総務省『社会生活基本調査』によると、無職の65歳以上男女の平均家事時間(1日あたり)は男性が51分、女性が178分。男性の分担率は、51/(51+178)=22.3%となる。男性(夫)の分担率は5分の1でしかない。都道府県別にみると、最高は長野の35.2%、最低は大阪の14.8%となっている。

 各県の高齢男性の家事分担率は、熟年離婚の発生率と関係がありそうだ。<図2>は、そのグラフだ。離婚率は、2012年中に離婚を届け出た女性(妻)の数を、同年10月時点の有配偶女性数で割って算出した。分子・分母とも60歳以上で、単位は1万人あたりにしている。

maita160921-chart02.jpg

 高齢者のデータでみると、男性の家事分担率は離婚率とマイナスの相関関係がある。相関係数(-1から+1までの値をとる測度で、-1に近いほどマイナスの相関が強いことを意味する)は-0.548で、統計的に有意(何らかの関連が認められる)だ。男性(夫)が家事をする地域ほど、離婚率は低い傾向にある。

 もちろん要因は他にも考えられるが、47都道府県の総体で見て、定年後の男性の家事分担率と離婚率の間に有意な相関関係が見られるのは注目に値する。

【参考記事】女性の半数が「夫は外、妻は家庭」と思っているのに、一億総活躍をどう実現するのか

 熟年離婚が悪いとは言わないが、妻に去られた夫の苦難は想像される(それまで家事をしてこなかった場合は特に)。以前の記事で取り上げたが、男性の離婚率と自殺率はプラスの相関関係にある。女性には見られない男性固有の傾向だ。

 日本では定年退職に伴う役割変化があまりに急激で、男性はアイデンティティの大きな変更を求められる。しかしそれを緩和することは可能だ。現役時代から、仕事一辺倒の職業人だけでなく、家庭人や地域人としての顔も持つことだろう。それが充実した高齢期を送るためのステップとなる。

<資料:内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』(2015年度)>

筆者の記事の一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中