最新記事

座談会

「独立から起業へ」飛躍するために必要なこと

2016年2月29日(月)11時11分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

zadankai160229-1b.jpg

「自分で会社を立ち上げることにビビるようなことはなかった?」(右:加谷珪一氏)、「起業っていうのはもっとカジュアルにしてもいいと思っている。ぶっちゃけ、スキルは関係ない」(左:森雄一郎氏)

中澤 私がいたカシオの開発現場っていうのは、まわりは15歳以上も年上の、40代や50代の男性社員ばかりだったんです。そこでいつも言われていたのは、「きみは捨てるものがないから気楽でいいよな」っていうことでした。あまりにも言われ続けたので、そのうち、自分でも「そうなのかな」って思うようになったんです。

 2012年にカシオが携帯端末事業(カシオと日立とNECの合弁会社NECカシオモバイルコミュニケーションズ)から撤退することになり、カシオメンバーはNECに転籍することになったとき、会社に残ることもできたんですが、携帯はもう作れない。どこに配属されるかもわからない。私にとってはあり得ないことでした。

 じゃあ、明日から給料がなくなっても大丈夫かな、って考えたとき、うん、たぶん大丈夫だなって思えたんです。どうせ捨てるものもないんだから。そのとき、私は27歳だったんですが、当時は希望退職の枠を20代にまで広げていたので退職金ももらえたし、いろいろ計算してみるとカフェくらいできるじゃんって。

 それで、カフェを立ち上げたんです。だから、なにも不安がなかった。もし失敗しても、自分だけの責任だし、そうなったら深夜はファミレスでアルバイトして、朝から派遣で働いてもいい。エクセルもパワポも使えるから、普通の事務職ならなんとかなるだろうって思っていました。

「捨てるものがない」って言われてきたから、それはこういうことだろうって、勝手に勘違いしていたんでしょうね。

加谷 私の世代だと、やっぱりそうはいかなかったんですよね。とにかく事務所を持たないと会社じゃない、っていう雰囲気がまだまだあったので、やっぱり大変だったんですよ。長沼さんはご自身でも独立していらっしゃいますが、いま起業する方のマインドってどうなっていると思いますか?

長沼 私が独立したのは26歳のときですが、コンサルティング業務なので、大きな固定費があるとか初期費用がかかるといったこともなくて、やっぱり恐れはなかったですね。

 おふたりの話を聞いていても思ったのは、私自身もそうだったけれど、フリーランスとして独立するハードルがものすごく低くなっているということです。「労働集約型」というか、在庫をもったり、大きな固定費をかけたりすることなく、自分という労働力だけでやれるビジネスが増えているんじゃないでしょうか。

 ただ、そこから新しいサービスを作るとか、メーカーを立ち上げるといったことは、もう一歩進んだ飛躍ですよね。フリーランスからモノづくり、つまり、独立から起業への飛躍というのは、まさに加谷さんのおっしゃる「プチコングロマリット」だと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、マイクロンへの補助金発表へ 最大6

ワールド

米国務長官、上海市トップと会談 「公平な競争の場を

ビジネス

英バークレイズ、第1四半期は12%減益 トレーディ

ビジネス

ECB、賃金やサービスインフレを注視=シュナーベル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中