最新記事

欧州

イタリア人の国外脱出が止まらない

政治家が躍起になって移民受け入れを制限する一方で、国を捨てるイタリア人が増加中

2014年1月28日(火)16時45分
ジョシュア・キーティング

そして誰もいなくなる 厳しい経済状況の下、イタリアでは出生率の増加も止まった Max Rossi-Reuters

 欧州で最も移民に厳しいイタリアが、問題に直面している。AFPによれば、国を捨てて海外に逃げ出すイタリア人が増えている上、新たにやって来る移民の数も減っているという。


 イタリア国家統計局によれば、国外移住したイタリア人は11年に5万人だったが、12年には36%増えて6万8000人になった。主な行き先はドイツやスイス、イギリス、フランス。国外移住する24歳以上のイタリア人の4分の1以上が、大学の学位を持っている。

 反対に、12年にイタリアへやって来た移民の数は、前年比約10%減の32万1000人だった。


 確かにこれらは、イタリアという国の大きさを考えれば深刻な数字ではない。しかし最近のイタリア政治に照らして考えると、興味深いものがある。

 移民に関する国内報道のほとんどは、アフリカや中東出身者に関するものだ。イタリアの人口に占める移民の割合は02〜12年で3倍に増えた。今では7.9%となり、政治的反発を引き起こしている。

 シルビオ・ベルルスコーニ首相(当時)は09年、反移民政策とあからさまな人種差別主義を打ち出す北部同盟と連携し、欧州で最も厳しい移民法を成立させた。

 イタリアをイタリア人だけのものにしておきたい人々にとって、問題は移民だけではない。国外に移住するイタリア人が増えていることは既に述べたが、厳しい経済状況の下、子供を産まない人が増えている可能性もある。マックス・プランク人口研究所(ドイツ)の最近の研究によれば、失業率が上がり始めてからイタリアの出生率の増加は止まってしまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中