最新記事

安全保障

日米関係は本当に悪いのか

The Resurgence of the U.S.-Japan Relationship

普天間やオスプレイをめぐるきしみの陰で、日米の同盟関係が静かにV字回復を始めた

2012年9月24日(月)11時28分
リチャード・ワイツ(ハドソン研究所上級研究員)

議論の的 5年間で58回の事故を起こしたオスプレイの配備には強い反発がある(12年9月、米バージニア州) Kyle N. Runnels-U.S. Marine Corps

 ここ数年で、日本とアメリカの安全保障関係はすっかり冷え込んでいた。沖縄の米海兵隊普天間基地の移設問題で地元が猛反発。加えて日本の民主党政権はアメリカ一辺倒でなく、中国との関係緊密化に意欲を見せていた。

 しかし、最近の日米防衛当局高官の行動と発言を見る限り、日米同盟は最悪の時期を脱し、むしろ再び関係が深まり始めているようだ。

 8月初め、日本の森本敏防衛相がワシントンを訪問。訪米の最大の目玉は、ワシントン近郊の米海兵隊基地で垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」に試乗することだった。

 米海兵隊は、オスプレイ12機をCH46中型輸送ヘリコプターに代えて普天間基地に配備する方針だが、日本ではこの輸送機の安全性に関して不安の声が高まっている。4月にモロッコで、6月にフロリダ州で墜落事故があり、モロッコでは2人が死亡、フロリダでは5人が負傷した(老朽化している上に効率の悪いCH46などの後継機としては十分な安全性を備えているというのが、米国防総省の立場)。

 日本の世論、特に沖縄県民がオスプレイ配備に強く反発する一因は、沖縄に在日米軍が集中していることへの不快感だ。何しろ、国土面積に占める割合で1%に満たない沖縄に、在日米軍の半分が駐留している。

日本に配慮するアメリカ政府

 近年、沖縄の基地問題の焦点になってきたのが普天間移設問題だった。96年と06年の日米政府の合意で移設が約束されたが、代替施設の設置場所決定が難航し、移設は実現していない。

 09年には、普天間基地の沖縄県外移設を掲げる民主党が政権を獲得。当時の鳩山由紀夫首相は鹿児島県徳之島への移設を目指したが、地元と米政府の反対に遭い、失敗に終わった。

 それでもこの4月、日米両政府は在日米軍再編見直しに関する共同文書を発表。沖縄駐留海兵隊員の半数近くに当たる9000人をグアム、ハワイ、オーストラリアに移転させ、海兵隊基地の多くを日本側に移管する方針を打ち出した。

 これで日本国内の反米軍基地感情がいくらか和らぐ......とはいかなかった。普天間への配備前のオスプレイの一時駐機場所である山口県岩国市と沖縄県の当局は、オスプレイの導入に強く反発。地元住民に危険が及ばないと政府が確認できるまで試験飛行を認めないと、野田佳彦首相も述べている。

 とはいえ、日米両国政府がこの問題で衝突しているわけではない。米政府は、日本側の不安がなくならない限り、日本国内でオスプレイを飛ばさないと約束している。墜落事故の原因は国防総省が調査中で、調査結果は日本側に知らせると、レオン・パネッタ米国防長官は8月初めに森本防衛相と会談した後の記者会見で述べた。

 森本や日本当局者はオスプレイ配備を支持している。沖縄駐留海兵隊がこれまでより遠方まで、しかも迅速に移動できるようになるからだ。その結果、海兵隊が日本の離島を守り、東アジアの緊急事態に対応する能力が高まると期待されている。

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏の1行、資本要件満たさず=ECB年次報告

ビジネス

アングル:邦銀のドル調達コストが急上昇、流動性低下

ビジネス

金融庁、店頭FXの決済リスクで有識者会議 証拠金倍

ワールド

ペンス米副大統領が来週中東訪問、アラブ諸国との関係

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする作らない製造業

2017-12・19号(12/12発売)

ものづくり神話の崩壊にうろたえる日本。新たな形の製造業が広がる世界

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    太陽系の外からやってきたナゾの天体、宇宙人の探査機の疑いで調査へ

  • 2

    ひき肉の偽装表示も99%の精度で暴く

  • 3

    歴史的急騰が続くビットコイン 仕掛人は意外にも日本の個人投資家

  • 4

    北朝鮮の消えた政権ナンバー2は処刑されたのか?

  • 5

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代か…

  • 6

    孤独なオタクをのみ込む極右旋風

  • 7

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 8

    ウクライナ紛争ではびこる性暴力

  • 9

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 10

    金正恩の「聖地登山」はインスタ映え狙って演出か …

  • 1

    太陽系の外からやってきたナゾの天体、宇宙人の探査機の疑いで調査へ

  • 2

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代から生きてきた

  • 3

    北朝鮮の消えた政権ナンバー2は処刑されたのか?

  • 4

    中国が密かに難民キャンプ建設──北朝鮮の体制崩壊に…

  • 5

    高いIQは心理・生理学的に危険――米研究

  • 6

    北の核実験で広がる「幽霊病」と苛酷な仕打ち

  • 7

    EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を…

  • 8

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 9

    ビットコインのために自宅を担保にするバカ、米当局…

  • 10

    習近平、「南京事件」国家哀悼日に出席――演説なしに…

  • 1

    北朝鮮「亡命兵士」の腸が寄生虫だらけになった理由

  • 2

    北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

  • 3

    金正恩を倒すための「斬首部隊」に自爆ドローンを装備

  • 4

    米朝戦争になったら勝つのはどっち?

  • 5

    「ICBM発射映像に炎に包まれる兵士」金正恩が目撃し…

  • 6

    太陽系の外からやってきたナゾの天体、宇宙人の探査…

  • 7

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 8

    推定500歳!地上で最古の脊椎動物はガリレオの時代か…

  • 9

    北朝鮮外務省が声明「戦争勃発は不可避、問題はいつ…

  • 10

    「軍事衝突は近い。国防総省は在韓米軍の家族を退避…

胎内のような、安心感のなかでイマジネーションを膨らませる。
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク日本版デザイナー募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月