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チャールズ皇太子を襲ったデモ隊の正体

学費値上げに反発する学生が暴徒化して英王室も標的に。しかしその背後には過激派グループの陰が見え隠れしている

2010年12月20日(月)14時42分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)

広がる不満 学生の抗議デモは11月頃からイギリス各地で起きている(写真は12月9日、ロンドン中心部で行われたデモ) Andrew Winning-Reuters

 大学授業料の値上げに反対するロンドンでの抗議活動が激しさを増している。12月9日に学費値上げにつながる教育関連の予算削減法案が下院で可決されたことを受け、最高裁判所や財務省などの窓ガラスが割られ、トラファルガースクエアの巨大クリスマスツリーも放火されそうになった。

 チャールズ皇太子夫妻が乗る車も襲撃された。デモ隊はロールスロイスに白ペンキを投げ付け、プラカードなどで車をたたきながら「奴らの首を切れ」「保守党のクズ野郎」と叫んだ。

 犯人は誰なのか。デモ隊の表向きの要求は学費値上げへの反対。しかし彼らの発言や暴力性からは、学生らの大義が無政府主義者や極左団体に乗っ取られたことがうかがえる。実際、警察は以前から過激派グループの復活を警告していた。

 過激派の介入は、学生にとっては迷惑な話だ。暴力的な行動が報じられるせいで、本来の学費要求まで悪い印象が持たれる。世論調査でも、学生の要求には賛成する人が多い一方で、11月の保守党本部への襲撃のような行動には大多数が反対した。

 とはいえ過激派は、今回のデモと政府の高圧的な対応のおかげで勢いを増している。この冬のロンドンはアツくなりそうだ。

[2010年12月22日号掲載]

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