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宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星」の正体とは?

First-Ever Planet Found in the 'Forbidden Zone'—and It's Freezing

2025年5月15日(木)10時20分
イアン・ランドール

リンバッハの研究チームは、恒星WD 1856+534から来る光の詳細なモデルを作成。ウェッブ望遠鏡の中間赤外線装置で観測された光から、このモデルの光を差し引いた結果、恒星の周りを周回する天体のかすかな光が残り、WD 1856+534bの存在を突き止めることに成功した。

この信号の分析で、WD 1856+534bが惑星だったことが確認されただけでなく、質量は恐らく木星のおよそ5.2倍、表面温度は華氏マイナス125度という推定も明らかになった。

この温度は、これまでに光が直接観測された太陽系外惑星の中では最も低い(ただし最も温度が低い天体とはほど遠い。銀河系の中心核付近にある「OGLE-2005-BLG-390Lb」の表面温度は華氏マイナス370度前後)。

ではWD 1856+534bはなぜ、恒星が赤色矮星になっても禁断の領域で生き残ったのか。実は、ここで生き延びたわけではないらしい。

研究チームの推測では、最初はもっと離れた場所にあったWD 1856+534bが、恐らく別の惑星や恒星の重力の影響で、恒星が白色矮星に落ち着いた後に禁断領域に移動したと考えられる。

(翻訳:鈴木聖子)

【参考文献】
Limbach, M. A., Vanderburg, A., MacDonald, R. J., Stevenson, K. B., Jenkins, S., Blouin, S., Rauscher, E., Bowens-Rubin, R., Gallo, E., Mang, J., Morley, C. V., Sing, D. K., O'Connor, C., Venner, A., & Xu, S. (2025). Thermal Emission and Confirmation of the Frigid White Dwarf Exoplanet WD 1856+534 b. The Astrophysical Journal Letters, 984(1).

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