【密着ルポ】オープンAIのサム・アルトマンは、オッペンハイマーに匹敵する超人か? 密着して見えてきた、生成AI最前線に君臨する男の素顔と頭の中

THE REAL SAM ALTMAN

2024年2月2日(金)18時50分
エリザベス・ワイル(ニューヨーク・マガジン誌特集担当ライター)
実はシリコンバレーで一番の野心家とも言われるサム・アルトマン JIM WILSONーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO

実はシリコンバレーで一番の野心家とも言われるサム・アルトマン JIM WILSONーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO

<生い立ち、家族との確執、頭の中......。素顔を追って見えてきたサム・アルトマンの二面性>

昨年春のある日、オープンAIのサム・アルトマンCEO(38)は、シリコンバレーで絶大な人気を誇る瞑想指導者で僧侶のジャック・コーンフィールドと一緒に、サンフランシスコでイベントに登壇していた。叡智と最先端のテクノロジーの融合を目指す「ウィズダム2.0」という比較的地味なイベントだ。

アルトマンが顔を出すには場違いにも思える。司会者もそう感じたようだ。「どうして今日はここへ?」

「うん、まあ、そのー。今日の話題に興味があるのは間違いない」と、アルトマンは言った。この日の建前上のテーマは、マインドフルネスとAI(人工知能)だ。「でも、あのー、ジャックと出会えたことは、私にとって人生の大きな喜びの1つだ。ジャックと時間を過ごせるなら、どんな話題でも喜んで参加するよ」

このイベントの真の目的が見えてきたのは、コーンフィールドが挨拶の言葉を述べたときだった。「私の経験から言うと、サムは......奉仕型のリーダーという性格が強い」

そう、この日のコーンフィールドの役割は、アルトマンの人柄にお墨付きを与えることだった。いま多くの人の頭の中にある問いに答えようというわけだ。それは、アルトマンをどれくらい安全な人物だと思っていいのか、という問いである。

グレーのワッフル生地のヘンリーネックシャツを着た、このまだ若い男性は、AIが世界にどのような影響を及ぼすかを左右する存在に見える。それだけに、この問いはひときわ重要な意味を持つ。

コーンフィールドによれば、2人は数年来の知り合いで、一緒に瞑想をし、どうすれば「全ての生命への配慮」などの価値を生み出せるのかを語り合ってきたとのことだった。

コーンフィールドが話す間、アルトマンは足を組まず、背筋をピンと伸ばし、辛抱強そうな表情をつくって座っていた(もっとも、その表情を見る限り、本来あまり辛抱強い人物でないことは明らかだった)。

アルトマンは、人々がAIを恐れていることをよく分かっている。というよりも、恐れるべきだと思っている。そこで自分には、AIに関して人々の疑問に答える道徳上の義務があると考えているのだ。

なかなか見えない人物像

本人があちこちで披露している自己分析を総合すると、アルトマンは頭はいいが天才とまでは言えず、思い上がりを抱きやすく、やや型破りな面を持った「ITエリート男性」ということになりそうだ。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中