最新記事
マラソン

運動後の疲労回復に!スポーツ健康科学の教授が教える最強の回復食

2025年3月3日(月)09時56分
後藤 一成 (立命館大学スポーツ健康科学部教授)*PRESIDENT Onlineからの転載

糖質だけでなくタンパク質も摂取すべき

練習後に筋肉のグリコーゲンをできる限り早く回復させる上で、糖質の摂取は必須です。

さらに、タンパク質を併せて摂取することでグリコーゲンの回復は早くなります。したがって、筋肉量を増やすことを強く望まない陸上競技の長距離選手であっても、毎回の練習後にタンパク質を摂取することには大きな意味があります。特に、次の練習まで数時間しかない場合、「糖質+タンパク質の最強タッグ」は威力を発揮するでしょう。

したがって、部活の練習後は「スナック菓子・ジュース」ではなく、「おにぎり・牛乳(ゆで卵やプロテインパウダーでも良いでしょう)」や「肉まん・牛乳」の組み合わせが良いのです。


試合前にトンカツを食べるのはオススメしない

大事な試合を翌日に控えた場合、皆さんは何を食べるでしょうか? 縁起をかついで「カツ(勝つ)」を食べるという方もいらっしゃるかもしれませんが、スポーツ栄養学の観点からは糖質中心の食事がオススメです。

トライアスロンやマラソンなどレースが長時間に及ぶ競技の前日には、「カーボパーティー」と呼ばれるイベントが開催されることがあり、参加者はパスタなどを食べながら懇談します。「カーボ」とは「カーボハイドレート(carbohydrate)」の略語で、炭水化物や糖質という意味です。

なお、炭水化物というのは、吸収されてエネルギー源となる「糖質」と消化吸収されずにエネルギーとはならない「食物繊維」の総称です。腸の調子を整える食物繊維は重要ですが、試合前の食事ではレース時に直接エネルギー源となる糖質を優先します。糖質はご飯、麵類、パン、いもなどに豊富に含まれています。

筋肉に含まれるグリコーゲンは、長時間運動の大切なエネルギー源です。また、血液中のブドウ糖も筋肉に取り込まれてエネルギーとして使用されます。一方、運動時間が長くなると血液中のブドウ糖が次々と筋肉で消費されることから、次第に血糖値が低下します。

ブドウ糖は脳のエネルギー源でもありますので、血糖値が低下すると集中力が低下し、瞬時の判断能力も低下します。これを防ぐのが肝臓に蓄積されたグリコーゲンです。長時間運動中に肝臓のグリコーゲンを分解して血液中にブドウ糖として放出することで、血糖値の低下を防いでいるのです(図表3)。

【図表3】長時間運動中における肝臓のグリコーゲンの役割 イラスト=豊岡絵里子

イラスト=豊岡絵里子 出所=『最新のスポーツ科学で強くなる!』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中