最新記事
映画

『スーパーマン』は中東を描いた作品ではない──それでも世界が映画の中に「ガザを見た」のはなぜか?

What 'Superman' Says About Gaza—And Us | Opinion

2025年7月24日(木)16時24分
ファイサル・クッティ(弁護士・法学教授)
スーパーマンのマーク

Jon Tyson-Unsplash

<監督本人が政治性を否定。「スーパーウォーク(Superwoke)」批判に、パレスチナ視点からは「白人の救世主」との声も。それでも今作が「正義」である理由──(レビュー)>

ジェームズ・ガン監督(James Gunn)による新作映画『スーパーマン(Superman)』の試写を終えた観客の多くは、ポップコーンやスーパーヒーローのノスタルジーだけでなく、ある強烈な感覚を抱えて劇場を後にした──。

それは、まるでイスラエル・パレスチナ紛争の寓話を見せられたかのような感覚だった。

『スーパーマン』予告編


そしてそのこと自体が、重要な意味を持っている。

一部の親イスラエル系論者から激しい批判やボイコットの呼びかけがあったにもかかわらず、『スーパーマン』は世界中で大ヒットを記録し、公開初週末だけで2億2000万ドル以上を稼ぎ出した。

ガンは繰り返し、「『スーパーマン』は中東を描いた作品ではない」と主張している。

「脚本を書いた当時、中東の紛争は起きていなかった」と英タイムズ紙に語り、ボラヴィアとジャルハンプールの架空戦争は、2023年10月7日のハマス主導の攻撃や、それに続くイスラエルによるガザ攻撃の前に構想されたものだと説明している。

現実の戦争が始まった後は、中東を想起させる描写を避けるよう努めたとも述べている。

だが、そうした否定にもかかわらず、寓話としての受け止め方はすでに広まりつつある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

上海でAI会議開幕、中国の李首相は世界的な協力組織

ビジネス

NASA、職員の20%が退職へ=広報

ワールド

タイとカンボジアの衝突3日目に、互いに停戦と交渉開

ワールド

台湾でリコール投票始まる、野党議員24人の解職に是
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 5
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 6
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 7
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    機密だらけ...イラン攻撃で注目、米軍「B-2ステルス…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人口学者...経済への影響は「制裁よりも深刻」
  • 3
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 4
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 5
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 8
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 9
    父の急死後、「日本最年少」の上場企業社長に...サン…
  • 10
    約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 6
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中