東京五輪で脚光を浴びた「編み物王子」、誰にも理解されなかった「孤独と苦悩」とは
Never Give Up on Your Dreams

「理解してくれる人が誰もいなくてとても孤独だった」と語るデイリー WARNER BROS. DISCOVERY, INC
<東京五輪飛込競技で金メダルを獲得したトム・デイリー。彼を追った長編ドキュメンタリーが、輝かしい活躍の裏にある苦しみに迫る>
トム・デイリー(31)が世界中の人々から注目を浴びる存在になったのは、14歳だった2008年。水泳の飛び込み競技のイギリス代表として北京五輪に出場した時だ。
その後、5度の五輪に出場し、21年の東京大会の金メダルを含む5つのメダルを獲得している。東京五輪では、競技会場の観客席で趣味の編み物をする姿が話題を呼んだ。
一方で、ごく若いときに目覚ましい成功を収めたことに伴うストレスにずっと苦しみ続けてきた。「とても孤独だった。理解してくれる人が誰もいなかった」と語る。
同性愛者であると公表したことでも大きな苦しみを味わうことになった。「ついにカミングアウトしたときは、本当に怖かった」
子供時代にはいじめの標的にもなった。「いじめられていることで自分を責めたこともあった。今の状況は本当に幸運だと思うし、感謝もしている。けれども、人生は本当に過酷だった」
6月1日に公開された長編ドキュメンタリー『トム・デイリー──1.6秒』(オリンピックス・ドットコムで配信)では、これまでの人生について語っている。
【動画】『トム・デイリー──1.6秒』オフィシャルトレーラー
現在、パートナーと共に2人の子供を育てるデイリーは、このドキュメンタリーを誇りに感じているという。「将来私の子供たちが私の競技人生について知るための材料があるのは、素晴らしいことだと思う」
本誌H・アラン・スコットがデイリーに話を聞いた。