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「私は大嫌い」「デミ・ムーアが最高の当たり役」...カンヌでも賛否両論、映画『サブスタンス』は良作か駄作か?

The Substance Lacks Any

2025年5月16日(金)18時22分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

もっとも、肉体のタブーに挑戦してきたムーアを主演に迎えた点は素晴らしい。妊娠中にヌード写真で雑誌の表紙を飾ったのはおそらくムーアが初めてで、『G.I.ジェーン(G.I. Jane)』で体を鍛え上げ、スキンヘッドで兵士を演じたのも当時としては大胆だった。

G.I. Jane (Soldato Jane) by Ridley Scott - with Demi Moore - Official Trailer by Film&Clips


セレブとしての人生も、人物像が曖昧なエリザベスの経験よりずっと興味深い。今回は、美貌にしか自分の価値を見いだせない女の底知れない不安を見事に表現した。


往年のボディーホラーに倣い2時間以内にまとまっていたら、B級ホラーとしてそこそこ楽しめたかもしれない。

だが2時間22分はあまりに長く、繰り返しも多すぎる。エリザベスとスー、あるいはそのなれの果てが最期を迎えると、やっと苦行から解放された思いがした。

ネバネバした粘液の描写が特徴的なクローネンバーグ作品を力業で料理し直したようなホラーが好みの向きは、『サブスタンス』を気に入るだろう。だがこの映画に中身があるなんて、私にはゆめゆめ言わないでほしい。

©2025 The Slate Group


The Substance
サブスタンス
監督╱コラリー・ファルジャ
主演╱デミ・ムーア、マーガレット・クアリー
日本公開は5月16日

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