最新記事
BOOKS

「精緻で美しい奇跡」ノーベル賞作家ハン・ガン『別れを告げない』、米メディア書評

Han Kang’s Great Unerasing

2025年2月14日(金)17時30分
ローラ・ミラー(コラムニスト)
ノーベル文学賞作家のハン・ガン

軍や警察が島民を大量虐殺した済州島四・三事件を取り上げたノーベル文学賞作家のハン・ガン REX/AFLO

<ノーベル文学賞作家ハン・ガンの『別れを告げない』英語版が、1月に出版された。アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』も引き合いに出しながら、米コラムニストはこう読む>

ハン・ガン(韓江)は昨年ノーベル文学賞を受賞した注目の韓国人作家だ。その最新刊『別れを告げない』の英語版が1月、ホガース社より出版された(邦訳は昨年3月に白水社から既刊)。

物語は作家のキョンハがこの世を去ろうとするところから、幕を開ける。夫とは別れたようだが娘がいることを除いて詳細は分からず、その娘も一度も登場しない。


キョンハはソウルのアパートに独り籠もって偏頭痛に耐え、水と通販のキムチで命をつないでいる。毎日手紙の形で遺書を書くが宛先を決められず、晩には破り捨てる。

ハンの描く女たちは、しばしば人間の残忍さを知ったことで打ちひしがれる。キョンハの場合は「K」と言及される町で起きた虐殺について本を書いたことが、絶望の原因らしい。

「K」とは光州市だろう。ハンは2014年の『少年が来る』で光州事件を取り上げた。1980年に軍が学生主導の民主化運動を鎮圧し、多くの市民を殺害した事件だ。

ハンの父は光州で教師をしていたが、蜂起の4カ月前に仕事を辞めてソウルに越したため、一家は難を逃れた。ハンは12歳の時に父の本棚で偶然に追悼写真集を見つけ、光州事件を知ったという。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

-中国が北京で軍事パレード、ロ朝首脳が出席 過去最

ワールド

米政権の「敵性外国人法」発動は違法、ベネズエラ人送

ビジネス

テスラ、トルコで躍進 8月販売台数2位に

ワールド

米制裁下のロシア北極圏LNG事業、生産能力に問題
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中