最新記事
動物

なぜネコ科の動物でライオンだけが群れを作る? メス達の欲求に応えないオスは追放、20秒の交尾を毎日50回1週間も繰り返す

2023年6月27日(火)20時05分
田島 木綿子(国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹) *PRESIDENT Onlineからの転載
交尾するライオン

Jen Watson - shutterstock


群れで暮らし、たくさんのメスを率いるライオンのオスは絶対的王者というイメージがある。しかし生物学者の田島木綿子さんは「実は交尾の主導権はメスにある。オスは一斉に発情するメスたちの要求に応えて1日50回以上の交尾を繰り返すことも。しかし、それを拒否すれば群れから追放されてしまう」という――。

※本稿は、田島木綿子『クジラの歌を聴け』(山と溪谷社)の一部を再編集したものです。

トゲトゲの陰茎で排卵を促すライオンのオス

哺乳類の陰茎は、基本的に「弾性線維型」と「筋海綿体型」の2種類に分けられる。要は線維質が多いか、筋肉と血管が多いかの2つに大別される。

筋海綿体型の陰茎をもつ動物の中には、交尾中にメスの排卵を促すという、さらなるツワモノも存在する。ライオンをはじめとするネコ科の動物である。

ネコ科のオスは、陰茎の表面に「角化乳頭(陰茎棘(きょく))」と呼ばれる無数のトゲ状突起があり、交尾中にこのトゲでメスの膣粘膜を刺激し、排卵を誘発する(交尾排卵)。

これもまた、確実に自分の子孫を残そうとする戦略の一つである。

ライオンは、アフリカのサバンナや草原、インドの森林保護区に生息する大型ネコ科動物である。ネコ科動物は一般に、体格や体形に雌雄差がそれほど見られないが、ライオンではオスの体長が170~250センチメートル、体重150~200キログラムなのに対し、メスの体長は140~175センチメートル、体重120~180キログラムで、雌雄にかなりの体格差がある。加えて、オスには"百獣の王"とうたわれる所以(ゆえん)でもある「たてがみ」が生えているのが大きな特徴である。

ライオンの陰茎の表面にある「角化乳頭(陰茎棘(きょく))」

イラスト=芦野公平 出典=『クジラの歌を聴け』より

性ホルモンの分泌が多いオスほど、たてがみが黒くなる

たてがみは、メスへのアプローチやオスの象徴、さらにはオス同士の威嚇など重要な役割を担っている。

性ホルモンの一つ、テストステロンの分泌が多いオスほど、たてがみの色がより黒くなる傾向にあり、立派なたてがみの条件は毛量よりも色の濃さにあるという説もある。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩

ワールド

イラン、欧州3カ国と2日にローマで会談へ 米との核

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

豪総選挙、与党が政権維持の公算 トランプ政策に懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中