宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う

2025年5月12日(月)09時55分
田川 伊吹 (病厄除守護神 廣田神社 第17代宮司)*PRESIDENT Onlineからの転載

「お守り500円」は高い? 安い?

お守りは神社の主な収入源のひとつですが、私が宮司に就任した当時、廣田神社で頒布していたお守りの初穂料は350〜500円。全国的にみても500円程度が一般的でした。みなさんは、この500円という金額、お守りの代金として妥当だと思いますか? 

その頃の私は「お守りの価値はその程度のものなのか」と疑問に思っていました。

そもそもお守りは、「買う」ものではありません。「授与品」という言葉からもわかるように、神様から授けていただくものです。そのため、お守りの金額は「価格」ではなく、「初穂料」と言います。


初穂というのは、その年に初めて収穫された稲穂のこと。実りの秋に感謝の気持ちを込めて神様にお供えしていたため、「神様に供えるもの」の意味でも使われるようになりました。そこから、お供えする金銭のことは、「初穂料」と言われるようになったのです。

お守りは神様のお力をいただくものですから、本当は、値段はつけられません。

昔はそれぞれが自分の「お気持ち」を納めて、いただくものでした。しかしそれだと、いくら納めればよいかわからないという人が増えたため、神社が「初穂料は○○○円」と決めるようになったのです。

お守りの本来の価値が忘れられている

金額が決められてしまえば、それはそのものの価値を測るひとつのものさしになってしまいます。

500円程度で比較的手軽に手に入れば、その分の価値しかないと感じてしまう人も少なからずいるでしょう。そのせいか、いただいたお守りを大切に、肌身離さずもち歩いている人は減っているように感じます。

つまり、お守りの本来の価値や役割が忘れられてしまっているのです。

ご祈祷に関しても、私には同じような懸念がありました。

初宮参り、七五三、厄除祈願など、人生儀礼のご祈祷は、本来、神様の前でこれまでの人生を振り返って感謝したり、今後の成長を祈ったりする場ですが、そういう意識をもっている人は少ない。

たくさんあるイベントのひとつとして、写真を撮ることに一生懸命になっている人も多いです。

こういった現状は、お守りやご祈祷の意味やありがたみをきちんと伝えられていない宮司にも原因の一端があると考えています。

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