宮司の6割超が年収300万円未満...コンビニより多い神社の持続可能性を問う

2025年5月12日(月)09時55分
田川 伊吹 (病厄除守護神 廣田神社 第17代宮司)*PRESIDENT Onlineからの転載

兼業しないと家族を養っていけない

多くの神社の経営状態が厳しいなか、1年間の収入が300万円未満の宮司が6割以上とも言われています。それでは家族で食べていくのが難しいため、会社員や公務員と兼業している宮司が大勢います。

青森市と周辺地区をあわせて100社ほどある神社のうち、生活するだけの十分な収入がある神社は5社ほどしかありません。そういう状況で、社家をやめてしまったところもあります。


神社の経営不振・後継者不足は日本全国で起こっていて、その結果、神社の数は減少の一途をたどっています。國學院大学の石井研士教授の調査によれば、2040年までに3万2867法人が「限界宗教法人」と位置付けられるとされています。

ではこんな時代にも、守られ、続いていく神社とは、どんな神社でしょうか?

ローマの遺跡のように歴史的価値があればよいかというとそんなことはありませんし、観光地でもなく、国の援助もない状態では維持していく収入を得ることも難しい神社がほとんどでしょう。ただ、それよりも重要なのは、地域の人たちとのつながりです。

コンビニより多い神社が存続する方法

たとえば、日頃の収入が少なかったとしても、お正月には地元の人々が集い、お祭りの際には金銭や労働力を惜しまず提供してくれたり、境内の修繕が必要な際には寄付が寄せられたりします。

これらは単なる協力としてではなく、地域の人々が日々の感謝の念を神様に捧げ、神社を大切な存在として守りたいという思いがあってこそ成り立つのです。

こうした「ご奉仕」の心が広がれば、結果として神社そのものの収入は微々たるものでも維持することができるでしょう。

あるいは、近くを通ったついでに「ちょっとご挨拶」といった感覚で、出退勤や外にお出かけする通り道としてお参りするのが習慣化され、毎日50人ほどお参りされる神社だったらどうでしょう。

一人のお賽銭が100円であったとしても、ある程度の運営資金を確保できます。

まず、地域の人たちにとって、現在進行形で祈りを捧げる場所、拠り所となるという、本来の神社の役割を果たすこと。そうすれば結果として、守られる存在になれるのです。

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