最新記事
世界経済

今年のクリスマス・プレゼントはチョコが人気に イギリス、苦しい懐事情を反映

2023年12月17日(日)11時15分

プレミアム製品で利益率も改善

またメーカー各社は、今年46年ぶりの高値となったカカオ豆高騰の影響を緩和するため、販売価格を高めに設定できる「プレミアム」志向を強めた高級チョコレート製品を登場させている。

資産運用会社ボントベルのアナリスト、ジャンフィリップ・バーツキー氏は、「(プレミアム製品は)第4四半期の収益に貢献するだろう。チョコレートメーカーにとってクリスマス商戦は最大の書き入れ時だ」と語る。

ネスレでは、2022年に17.1%だった営業利益率は、今年17─17.5%になると予想している。

ネスレの最新の年次報告書によれば、製菓部門の年間売上高は約81億スイスフラン(1兆3459億円)。昨年のグループ全体での売上高は944億スイスフランだった。

調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、世界のチョコレート市場の規模は1235億ドル(約18兆円)。この市場が年間で最も活況を呈するのがクリスマス商戦の時期だ。

モンデリーズで営業広報担当マネジャーを務めるスーザン・ナッシュ氏は、比較的安価な嗜好(しこう)品は、ヤングアダルト層のあいだで特に人気だという。

米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが実施した調査では、今年のクリスマス商戦では、英国のZ世代消費者の90%、ミレニアル世代消費者の83%が、これまでより低価格な商品にシフトするつもりだと答えている。全年代では、回答者の73%がこれまでより低価格のギフト商品を買うつもりだとしている。

医師のエビー・バーンさん(29)さんは、クリスマスに友人たちと楽しむプレゼント交換会の予算を、昨年の20ポンドから今年は10ポンドに引き下げるという。

バーンさんは、ロンドン南東部キャンバーウェルのスーパー「モリソンズ」で買い物をしながら、「私たちは知らず知らずのうちに、いろいろ少しずつスケールダウンしているのかも知れない」と話す。

英国では缶入り高級チョコレートを贈ることがクリスマスのお祝いの1つになっており、サーカナによれば、国内の贈答用チョコレート市場の規模は約18億ポンド(約3,246億円)に達しているという。価格の上昇を背景に、この1年で市場規模は7%膨らんだ。

やはりサカーナのデータによれば、英国の玩具市場の規模は約20億ポンドで、今年は4%近く縮小した。

クリスマスが過ぎれば、来年に向けてチョコレートメーカーが販売条件の悪化に直面することが予想される。各ブランドがカカオ高騰の価格転嫁を試みるからだ。とはいえ業界幹部らは、それでも他の裁量消費に比べれば、チョコレート需要は持ちこたえるだろうと話している。

「懐事情が厳しくなると、消費者は可処分所得を何に使うか見直す。とはいえ、贈答用の菓子類への支出が削られてしまう可能性は低い」とナッシュ氏は言う。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ビジネス

中国平安保険、HSBC株の保有継続へ=関係筋

ワールド

北朝鮮が短距離ミサイルを発射、日本のEEZ内への飛
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中