最新記事

ワークプレイス

クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く

韓国最大のオンラインゲームポータル「NHNエンターテインメント」

2016年1月15日(金)11時12分
WORKSIGHT

地下1階、港をモチーフとした巨大なカフェテリア「PORT 629」。629とは建物があるサムピョンドン629番地からとった。


[課題] 好まれるゲームを素早くリリースしたい
[施策] ライフスタイルを尊重して自律性を養う
[成果] 世界的なゲームカンパニーへ

 2013年8月、NHNのゲーム事業部門が独立して生まれた「NHNエンターテインメント」(以下、NHN)。系列会社を束ねると資産規模1兆ウォン(約988億円/2014年8月現在)に達する、世界的ゲームカンパニーだ。日本でも、オンラインゲームのポータルサイト「ハンゲーム」の運営で名を知られる。

 彼らが入居する地上10階・地下1階建ての社屋「プレイ・ミュージアム」を、コンセプト作りからデザインに至るまで手がけたのは、同社のブランドチーム。日常、製品やサービスのほか、ポスターや広告、社内で使用される封筒や便箋など、同社のブランディングツールすべてを統括する部署だ。とはいえ、オフィスデザインを外注せず、社内のブランドチームに一任する企業は珍しい。同社理事のヤン・ソンユル氏は、その理由をこう説明する。

「私たちはここを、単なるオフィスではなく、われわれのサービスと製品にとっての基準点であるべきだと考えたのです。どちらも生み出す主体となるのは社員たち。ならば、製品やサービスと一貫するディテール、クオリティを持ったオフィス空間で仕事をしてもらうのが、必然だろうと」

より愛されるゲームを、より早くリリースする

「プレイ・ミュージアム」にはもう一つ、明らかな狙いがある。同社が直面する経営課題の解決だ。すなわち「開発のスピードアップ」。言い換えるなら、「より愛されるゲームを、より早くリリースする」企業への進化だ。

 ゲーム産業の中心がPCオンラインからモバイルへと移行した結果、開発からリリースまでのサイクルは高速化の一途をたどっている。競争で優位に立つのは、既存のメジャーカンパニーではなく、小回りの利く中小ゲームスタジオだ。NHN自身、制作期間1~2年におよぶ大型ゲームに注力する一方で、10人以内のスタッフで作る小型モバイルゲームの比重を高めつつある。より愛されるゲームを、より早くリリースすること。これは目下、あらゆるゲームメーカーが直面している課題だ。

「ゲームのもとになるアイデアは、各社似たものがあります。しかしヒットするのは、先にリリースされたものか、より完成度を高められたゲーム。いずれにせよ、開発のスピードが全てを決定する時代なのです」(ヤン・ソンユル氏)

コミュニケーション・スピードを上げるためにデザインされたオフィス

 NHNが大きくなるに連れて避けられない問題となったのが開発のスピードだが、この新社屋はまさしくその課題を解決するために生まれたものだと言える。FGT(Focus Group Test)ルームとサウンドフォトスタジオを社内に備えているのは、さすが世界的ゲームカンパニーといったところ。FGTルームは数人のユーザーを集めてリリース前のテストをする設備。サウンドフォトスタジオでは映像作業と音響作業が行われる。いずれも開発プロセスのスピードアップに寄与する設備であることは間違いない。

wsNHN_1.jpg

(左上)同社が位置するパンギョ・テクノバレーは政策の一環としてゲーム、Web、通信などの企業が集約された地区。税制上の優遇措置などがとられている。(左下)デスク頭上を「葉っぱ」で覆い、作業に集中するため周囲の目を遮断する社員。上からの照明を遮り、間接照明を演出する効果もある。「葉っぱ」は分社化前に全社員に配布。(右)建物中央を貫いている「中階段」。分断されがちな各フロアを連結し、社員同士のごく自然な意志疎通を促す機能を果たしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中