最新記事

事件

乗客レイプのUber運転手に終身刑で、問われる安全性

急成長中の米配車アプリを使った犯罪は、果たして「強姦大国」インド特有の問題と言いきれるのか

2015年11月4日(水)14時34分
ルーシー・ウェストコット

氷山の一角 女性客をレイプしたウーバーの元運転手(右から3人目) Adnan Abidi- REUTERS

 インドのニューデリーで、配車サービス「ウーバー(Uber)」の元運転手が25歳の女性客をレイプしたとして有罪判決を受け、終身刑となった。

 ウーバーでタクシー運転手をしていたシブ・クマール・ヤダブ被告(32)は先月、レイプおよび脅迫、誘拐、傷害の4件で罪を問われ、有罪を言い渡された。被害者の女性によれば、2014年12月、ウーバーで勤務先から自宅までの配車をリクエストしたが、ヤダブに人気のない場所へ連れて行かれ、目が覚めたときにはヤダブが隣にいたという。被告は無罪を主張していた。

 今週、量刑を言い渡した裁判官は「(ヤダブは)自然死するまで収監される」と述べたと、アルジャジーラは報じている。AFPによれば、終身刑はレイプに対する判決としてインドでは最高刑とという。懲役刑に加え、2万1000ルピー(約3万9000円)の罰金も科せられたという。

営業停止となり、対策を打ち出したウーバー・インド

 本誌の取材に対し、ウーバー社はこの一件に関して新たな声明はないと返答した。先月のヤダフの有罪判決時には、ウーバー・インドのアミット・ジェイン社長が「レイプは不快極まりない犯罪であり、(ヤダブが)法の裁きを受けたことを歓迎する」と声明を出していた。

「ウーバーは安全性を重視している。この恐ろしい事件を教訓にして、当社は事件発生以降、運転手の身元確認の強化、年中無休・24時間のカスタマーサポートの改善など、多くの対策を行ってきた」と、ジェインの声明には記されている。

 ウーバーと他の同種のインターネット・タクシー配車サービスは、今回の事件後、デリーで一時的に営業停止処分となった。ウーバーは現在ではデリーでの営業を再開している。

 BBCによれば、今回のレイプ被害者はアメリカでもウーバー社(カリフォルニア州に本社がある)に対して訴訟を起こしたが、こちらは示談となっている。

 インドではここ数年、女性に対する暴力事件が相次いでおり、この事件は一連の悲惨なレイプ事件のひとつにすぎない。デリーの乗り合いバスの中で女子学生が集団レイプされて殺された2012年の事件は、特に世界に広く知れわたった。

 一方でウーバーには、運転手の身元にまつわる不安が指摘されてきた。ウーバーは2009年にアメリカで創業され、瞬く間に各国に広まったタクシー配車サービスだが、アプリで手軽に車を手配できる反面、一定の条件を満たせば誰でも契約運転手になれる不安もあった。利用者が事前に運転手の写真や評価を確認できるシステムはあるものの、運転手と乗客のトラブルが報告されてきたことも事実だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増と低調 追加利

ビジネス

午前の日経平均は続落、トランプ関税警戒で大型株に売

ワールド

ドバイ、渋滞解消に「空飛ぶタクシー」 米ジョビーが

ワールド

インドネシア輸出、5月は関税期限控え急増 インフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中