最新記事

ニュースデータ

ひそかに進む日本社会の「階層化」

文化活動を媒介にした親から子への地位の再生産は日本でも起きている

2015年8月11日(火)18時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

親の地位が子供に? 階層別の趣味や嗜好の違いは日本でも見られる Valentinrussanov-iStockphoto.com

 フランスの社会学者ピエール・ブルデューは『ディスタンクシオン』(「差異」の意味)という著書の中で、社会階層によって趣味や嗜好が異なることを明らかにしている。たとえば購読雑誌の傾向をみると、知識階層は文芸誌、労働者階層は大衆誌を好んで読む。絵画、映画、スポーツなどについても、何を好むかは階層によって違ってくる。

 これはフランスの話であって、「一億総中流」と形容される日本には当てはまらないと考えるかもしれない。しかし統計によると、その「差異」は実は日本でも見られる。

 総務省『社会生活基本調査』では、様々な趣味の実施率(過去1年間)を職業別に調べている。横軸に美術鑑賞、縦軸にパチンコの実施率をとった座標上に31の職業を配置すると、<図1>のようになる。美術鑑賞とは、テレビやDVDによるものは含まない。

maita20150811-chart1-2.jpg

 ホワイトカラー層は美術鑑賞、ブルーカラー層はパチンコの実施率が高い。クラシック音楽の鑑賞やテレビゲームなど、他の項目も合わせて考えると、ホワイトカラー層は芸術趣味、ブルーカラー層は娯楽趣味を好む傾向が見える。日本でも、趣味と社会階層はある程度結びついていると言えるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中