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極左とネオナチを選んだギリシャの窮状

厳しすぎる財政緊縮を強いれば、景気が悪くなるだけでなく危ない政党の台頭も招く

2015年1月27日(火)16時37分
ジョーダン・ワイスマン

EUとの対立再燃? ツィプラス新首相は、EUに債務減免を求めることを公約しているが Marko Djurica-Reuters

 予想通りの結果だった。25日に投開票されたギリシャ総選挙で、反緊縮を掲げる野党・急進左派連合(SYRIZA)が第1党に躍進した。支持率36.5%で、全300議席のうち149席を獲得するという圧勝だ。選挙前の与党・新民主主義党は第2党に転落。停滞する経済に、有権者もほとほと嫌気がさしたのだ。

 SYRIZAは、同じく反緊縮の右派政党「独立ギリシャ人」(13議席)と連立を組む。「独立ギリシャ人」は反ユダヤ姿勢を批判されている党だが、EUやIMF(国際通貨基金)からの金融支援と引き換えに求められている緊縮財政に強く反対し、支持を伸ばした。

 第3党に食い込んだのが、極右政党「黄金の夜明け」。ネオナチ政党とも言われる彼らは、党首を含む幹部が殺人で逮捕・起訴されている。BBCによれば、黄金の夜明けの主張は「反緊縮」ではなく「反体制」だ。といっても、両者の根本は同じ。ギリシャの人々は怒っており、自分たちを守ってくれなかった主流派の政治家たちに背を向けたのだ。

わずかだが成長は戻りつつある

 今後、ギリシャがどうなるかは分からない。新首相に就任したSYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首は、ギリシャの巨額債務の減免についてEU首脳らと再交渉することを公約にした。SYRIZAは債務の半額免除を望み、そこで浮いた分を景気刺激策に充てたいと考えている。

 債権国の筆頭であるドイツは返済免除の「可能性はまったくない」としているが、返済延期といった多少の変更は協議の余地がありそうだ。EUとの対立がエスカレートし、ギリシャがユーロを離脱するとみる向きもあるが、筆者はそんなことにはならないと考えている。

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