最新記事

ロシア

ルーブル危機でロシア経済はもう手遅れ

2014年12月17日(水)18時35分
ジョーダン・ワイスマン

 同時にウクライナ問題で欧米の経済制裁も受けている。ロシアの政府系銀行や石油企業が発行する債券のうち、満期までの残存期間が1カ月以上のものの取引を禁止している。つまりこれらのロシア企業が債券を発行して資金を調達しようとしても、30日未満のお金しか借りられないということだ。金利をさらに引き上げても、経済を立て直して資金を呼び戻すことはできない。

 ではどうすればロシア経済は生き返るのか? おそらくどうにもならない。ブルームバーグは、通貨統制が導入されるという憶測を伝えている。最低限、資金の国外流出を食い止めるためだ。

 前例はある。90年代後半のアジア通貨危機では、マレーシアが資金流出を防ぐために通貨統制を実施した。しかしこれもまた、扱いにくい方策だ。通貨統制を真剣に検討した瞬間から、投資家がドアの閉まる前に資金を引き出そうと動くリスクが生じる。またロシアを牛耳る富豪たちは、自分の資金の動きを規制されるのは嫌がるだろう。

 そもそも、通貨統制はうまく行かないかもしれない。ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、アンダース・アスルンドは、「世界中で一番、通貨統制を逃れるのがうまいのがロシア人だ」と話している。ロシア経済を救うために今できることは何かたずねると、彼はこう答えた。「経済制裁を終わらせることが唯一の策だ。他に選択肢はない。経済制裁が無くなれば、政府系金融機関などの資金調達は通常に戻る」

 もちろん、そのためにはロシアがウクライナ問題で西側の要求に屈しなければならない。しかしその可能性はありそうもない、と言わざるを得ない。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、インディアナ州にデータセンター建設 11

ビジネス

マイクロソフト出資の米ルーブリック、初値は公開価格

ビジネス

東京都区部CPI4月は1.6%上昇、高校授業料無償

ワールド

北朝鮮の金総書記、25日に多連装ロケット砲の試射視
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中