最新記事

アジア経済

どん底の世界経済であの国が独り勝ち?

陰りが見える中国経済に代わって、インドネシアの躍進を期待する声が高まっている理由

2012年11月12日(月)14時45分
ジェームズ・パーカー

繁栄への道 高成長で高層ビルが林立するインドネシアの首都ジャカルタ Beawiharta-Reuters

 サブプライム住宅ローン市場の崩壊と、それに続く世界的な経済危機を見事に予測した、アメリカの経済学者ヌリエル・ルービニ。現在も世界経済の行方にはかなり悲観的で、特に来年の中国経済には厳しい見方をしている。

 そんなルービニも過去2年間、インドネシアに関しては楽観的だった。IMFもインドネシアの今年のGDP成長率を6%と予想している。

 インドネシアは過去15年間、いくつもの障害をうまく乗り越えてきた。アジア金融危機に政治的な構造改革、04年の壊滅的な津波、政情不安などだ。インドネシアには石炭、パーム油、木材といった巨額の対外投資を引き付ける重要な市場もある。世界第4位となる2億3000万の人口を抱えている点も、投資や事業拡大の対象として魅力的だ。

 この国の将来を楽観視しているのはルービニだけではない。IMFとOECD(経済協力開発機構)は最近、インドネシア経済に関する好意的な報告書を公表した。

内需の強さが切り札

 インドネシアの大きな強みの1つは、国内需要のGDPに占める割合だ。他の輸出依存型の国はGDPに占める国内消費の割合が危険なほど低いが、インドネシアの国内需要はGDPの3分の2に当たる。世界的に需要が低迷するなかで、内需の強さは切り札となる。

 成長を脅かす弱点を探すとすれば、主な貿易相手国である中国の成長神話が崩れかけていることだ。貿易収支がこのところ赤字続きなのも気になるところ。政府は、国内企業がより付加価値の高い商品を輸入するようになったからだ、と動じていないが、注意する必要はある。

 もう1つの問題は、クレディ・リヨネ証券アジアのアジア市場に関する最近の評価で、インドネシアのランキングが最下位だったこと。統治や規制環境などに関する評価が極めて低かったためだ。こうした問題に対処しなければ、経済的な成長は頭打ちになるだろう。

 それでも、過去にはもっと大きな荒波を乗り越えてきたインドネシアのこと。成長は維持されているし、政府は必要とあれば十分な経済政策や支援を行える状況にある。やる気さえあれば、今の勢いを持続できるのだ。

 あのルービニさえも味方とあって、インドネシア政府は相当の自信を付けているだろう。

From the-diplomat.com

[2012年10月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中