コラム

超エリートが走らす最先端の会社のかたち

2015年08月28日(金)13時53分

 ヒエラルキーの組織構造ではなく、小さなチームをたくさん社内につくる。このチームには、たとえば「10月までに会社の新しいオウンドメディアを立ち上げる」というようなミッションがあり、このミッションに向かってそれぞれが自分の持つ力を発揮する。チームのメンバーには「役職」「肩書き」はなく、「役割」があるだけということになる。メンバーやチームが自分自身で、ゴールの設定や仕事のやり方を自主的に決めていく。

 このホラクラシーという組織理念は2007年に誕生し、最初に導入した企業の経営者が2010年にホラクラシー協会という組織も設立している。最近、ザッポスという急成長したEC企業が導入して話題になった。AirBnBやGitHubなどの先鋭的な企業にも導入されている。

 なぜ先鋭的な企業がこの理念を好むのかと言えば、機敏にビジネスを展開していくためにはこういう組織形態が有利に働くからだ。自分のやるべきミッションを認識し、スキルが高くつねに完璧に状況認識できるスタッフが揃っていれば、ホラクラシーは有効に働くのだろう。何が売れるのか分からず俊敏な機動性を求められるいまの時代に強く適合したスタイルだ。

超優秀なメンバーにしか回せない?

 一方でホラクラシーには批判も少なからずある。責任の所在が不透明で、混乱してしまうという問題。独りよがりになってしまい、顧客視点が失われる危険性。こうした批判は、つまるところ言ってしまえば、超優秀なメンバーじゃないとホラクラシーはうまく行かないよ、ということなのだろう。

 ビジネスの世界が組織にホラクラシーのような機動性を求めていき、そういうスタイルでなければ成功がおぼつかないというようなことになっていくのであれば、ではごく普通の人たちはどうすればいいのだろう?

 これに今のところは明確な答はない。しかしこういうエリート集団の先鋭的な組織のあり方でも、改善していけばより一般的な共同体理念へと落とし込んでいくことも可能になるかもしれない。

 さまざまな社会実験や挑戦が、さまざまな場所で行われている。そういう先に、新たな社会の共同体、そのロールモデルが生まれてくるのだ。

プロフィール

佐々木俊尚

フリージャーナリスト。1961年兵庫県生まれ、毎日新聞社で事件記者を務めた後、月刊アスキー編集部を経てフリーに。ITと社会の相互作用と変容をテーマに執筆・講演活動を展開。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『当事者の時代』(光文社新書)、『21世紀の自由論』(NHK出版新書)など多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story