コラム

2022年 米中間選挙、「ゲリマンダー」「郵送投票」が実は重要

2022年11月08日(火)17時55分
米中間選挙

ILLUSTRATION BY ALEX FINE

<選挙区の区割りをめぐる争い、郵送投票を認めるかどうかの争い。この2つの「場外戦」が選挙結果に大きく影響するかもしれない>

2016年の大統領選以来、共和党の特にトランプ派にとっては、選挙結果に異議を唱えることが当たり前になっている。

今回の中間選挙でも、全国の選挙区で自分の気に入らない開票結果は「認めない」という主張が出てくる可能性が指摘されている。

それ以前に、今回の選挙の場外戦としては共和党の主導する「ゲリマンダー」、そして民主党が切り札とする「郵送投票」が重要だ。

まず、「ゲリマンダー」とは選挙区の区割りを自分の党に有利にする作戦。19世紀からある手法だが、共和党は現在、保守州の州議会を支配することで、一部のリベラルな選挙区を分割するなど有利な区割りを進めている。

2016年の選挙で、大統領選に必死になるあまりに州議会選挙に手が回らなかった民主党としては、この点で今回ハンディを背負っていると言われている。

その民主党はコロナ禍で定着した、貧困層やマイノリティーが投票しやすい郵送投票を、今回の中間選挙でも投票率向上の切り札にする作戦だ。だが、共和党はこの郵送投票を「不正」だとして多くの州で有効投票から排除する構え。

そのほかにも共和党は、黒人貧困層が集中する地区の投票所を閉鎖して投票をしにくくしたり、あの手この手で民主党の得票を削る作戦を展開した。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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