コラム

『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である

2025年04月19日(土)07時59分

「困ったさん」とは何か

「困った人」「困ったさん」という表現の是非についても考えたい。

辞書を引くと、連体修飾語として使われる「困った」には「不都合である」「うまく扱いかねる」「人に迷惑をかける」「手に負えない状態になる」「扱いに苦しむ」とある。

困った人、困ったさんは、このような性質を持つ人と解するのが妥当だろう。なお、ネットサイト「日本語俗語辞書」は「困ったちゃん」をこう説明している。

「困ったちゃんとは仕事でミスばかりする人や周りの人の気分を害するような言動を平気でする人など、他者を困らせる人、周りが処置に困るような言動をする人、無神経な人のことで、こういった困った人のことを人名的に呼んだものである」

政府広報オンラインによると、本書の帯で「困った人」の筆頭にあげられているASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)は、社会生活のなかでつまずきやすいことがあるという。このようなものがある。

・悪気はないのに、言動によって相手を怒らせてしまう。
・仕事をする中で臨機応変に業務ができない。
・忘れ物や落とし物、遅刻が多い。
・頼まれていた仕事や約束を忘れる。

一般論として、遅刻が多い人や約束を忘れてしまう人が職場にいる時、周囲の人は不都合や迷惑を感じ、扱いに苦しむことになる。つまり、「困った人」と見ざるを得なくなる。そういう「困った人」を積極的に採用したいと考える企業は、ほとんどないだろう。

ただし、忘れてはいけないのは、本書はあくまで「職場の困った人」という言い方をしていることだ。決して社会にとって不要だとか、生きているだけで迷惑だという主張をしているわけではない。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

SHEIN、米事業再編を検討 関税免除措置停止で=

ビジネス

中国中古住宅価格、4月は前月比0.7%下落 売り出

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story