静かに広がる「右翼テロ」の脅威―イスラーム過激派と何が違うか
NSU事件を受けて、ドイツではNSU、イスラーム過激派「イスラーム国(IS)」、極左組織「ドイツ赤軍派(RAF)」などそれぞれの専門家が参加したシンポジウムが開かれ、このなかでドイツ連邦議会でNSU調査を担当したクレメンス・ビニンガー議員は「治安機関は極右過激派に目を向けることはなく、彼らの思考スタイルはあまりに因襲的すぎた」と批判。これはつまり「『白人右翼によるテロはないだろう』という思い込みがあった」ということです。
さらに、RAFに詳しいジャーナリスト、バッツ・ピータース氏はNSUメンバーが20年近く偽名でドイツ東部に潜伏し、その間ほとんど活動せず、RAFやISと異なりほとんど何もメッセージを発しなかったことが、ドイツ社会における「白人右翼テロへの警戒感」を生まなかったと指摘。その結果、ドイツ治安機関の要注意人物に関する、全国で共有されるデータベースにNSUメンバーは掲載されていませんでした。
つまり、イスラーム過激派や極左過激派と異なり、NSUには組織的にメッセージを発する仕組みや宣伝が乏しく、その意思もほとんど見受けられませんでした。これに加えて公的機関の警戒も薄く、そのなかで白人右翼テロは静かに広がっていったといえます。
軽視されやすい右翼テロ
これは他の国にも共通する特徴といえます。これまで紹介したどの白人右翼テロの事例でも、イスラーム過激派や左翼過激派と比べて、自らの行為の正当性に関するアピールは稀です。さらに、先述の米国インベスティゲイティヴ・ファンドの調査でも、イスラーム主義者と比べて白人右翼に対する監視は乏しく、結果的に事件を未然に防げない率が高いことが報告されています。
外国人や少数派に対する警戒感が強まるなか、その国で支配的な民族や宗派によるテロ活動は見過ごされやすく、発生しても個人的な犯罪と扱われがちです。先述のように、白人右翼テロは明らかに社会的背景に基づく「テロ」ですが、多くの場合個人の「ヘイトクライム」と扱われやすく、このことは「『多数派』によるテロ」を増長させる土壌になるといえるでしょう。
「『多数派』によるテロ」は欧米諸国だけでなく、モディ政権に近いヒンドゥー過激派によるムスリム迫害が目立つインドや、軍や過激派仏教僧によるムスリム迫害が世界中から関心を集めるミャンマー、逆に政府の「イスラーム化」にともなってキリスト教会関係者などへの襲撃が相次ぐトルコなど、多くの国でみられることです。
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