コラム

「必然だった」日経平均の最高値更新...なぜ出遅れたか、米国・日本の経済の今後は?

2025年08月14日(木)17時50分
ドナルド・トランプ米大統領 石破茂首相

ドナルド・トランプ米大統領はTACOであったこと、石破茂首相は参院選で負けたことがそれぞれ株価上昇の要因となった REUTERS/Nathan Howard

<6月末から米国株の最高値更新が続いている。日本もようやく世界の株式市場の値動きに追いついた>

日本がお盆の週に入った8月12日、日経平均株価が4万2718円と、1年1カ月ぶりに終値の史上最高値を更新した。7月末に4万円台に上昇した日本株市場がこの夏に活況を呈しているのはなぜか。

一部経済メディアは、「マネーの膨張」が株高をもたらしたと解説しているが、それは的外れだろう。

というのも、米国株市場(S&P500)は一足早く6月末に史上最高値を更新するフェーズに入っている。同様の動きがドイツDAXで見られるなど、世界的な株高が起きていた。7月に日経平均も上昇していたが、米国株対比で見劣りしていたのが実情である。

ただ、7月末以降に日本株の上昇にも勢いがつき、米国株対比での出遅れを修正する格好で株高が起きている。日本株の上昇は、「マネーの膨張」といったあいまいな要因ではなく、世界の株式市場の値動きを見れば必然的な動きであるといえる。

6月末から米国株の最高値更新が続いている最大の要因は、8月2日コラム「結局、TACOだったトランプ米大統領...関税交渉で最悪の事態回避も、日本経済の厳しい夏は続く」で書いたように、トランプ米大統領がTACO=Trump Always Chickens Out(トランプはいつも怖気づく)であり、自傷行為である大幅な関税引き上げを回避していることだ。

経済成長や株式市場にダメージをもたらす極端な関税政策が実現しなければ、2026年からは減税を中心とした財政政策の効果で、減速する米国経済は持ち直すだろう。FRB(米連邦準備理事会)に利下げの圧力をかけることに加えて、銀行を含む金融セクターでの規制緩和を進めていることも、トランプ政権に対する株式市場の期待を高めていると筆者は考えている。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米政権が「麻薬船」攻撃で議会に正当性主張、専門家は

ビジネス

米関税で打撃受けた国との関係強化、ユーロの地位向上

ワールド

トランプ氏、職員解雇やプロジェクト削減を警告 政府

ワールド

インドと中国、5年超ぶりに直行便再開へ 関係改善見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story