コラム

日本株上昇~バブル後最高値更新の意味~

2023年11月29日(水)16時50分

日本経済の正常化が、株式市場で適切に反映

2023年の日本株の上昇は、名目GDPが従来レンジを上回って伸びたのとほぼ同じタイミングで起きたことになる。脱デフレ完遂が現実味を帯びて、名目GDPが増えない時代が終焉しつつあるとの認識が強まったことが、23年の日本の株高を牽引したと言える。

23年の日本株上昇は、脱デフレ完遂によって、日本経済が他の主要国と同様に正常化していることが、株式市場で適切に反映されていると位置付けられる。であれば、今年の株高は必ずしも行き過ぎた上昇とは言えないだろう。

日本では金融緩和が続き、副作用が大きいなどとメディアや論者が指摘してきた。ただ、黒田・植田態勢での日本銀行の金融政策が、円安を通じてインフレと名目GDPを押し上げる最後の一押しになった。この意味で、金融緩和が徹底されたプラスの側面は大きかったと言える。

2024年も日本株の上昇は続くだろうか

2024年も日本株の上昇は続くだろうか。2%インフレの安定化とともに、名目GDPが増え続けるかどうかが、引き続き重要だろう。2024年には日本銀行が、2年連続での春闘の賃上げ上昇を見定めた上で、マイナス金利政策を解除するなど、引締め政策に踏み出すと予想される。

2022年来の円安が続き、ドル円が歴史的な水準まで円安が進んだことが、2023年の名目GDPの大幅な増加を大きく後押しした。2024年は、円安の追い風がほぼなくなるとみられ、名目GDPは23年ほどの拡大は見込みづらい。この点は日本株高を抑制する要因になりそうである。

ただ、物価高が問題とされているが日本では、22、23年の米欧でみられた高インフレが起こる兆しはみられない。日本銀行が引締め政策を始めるとしても、性急な引締めを行う可能性は低いとみられる

1ドル150円前後はかなりの円安水準なので、2024年に1ドル130円台程度への円高進行であれば、24年も名目GDPは緩やかな伸びは確保できそうである。そうであれば、来年の日本株市場については、米国株などと同程度のリターンは期待できるのではないか。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)


ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け

ワールド

米中間選挙、生活費対策を最も重視が4割 ロイター/

ワールド

ロシア凍結資産、ウクライナ支援に早急に利用=有志連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story