コラム

「行き過ぎた円安」の修正、更に続く可能性

2022年08月03日(水)15時00分

日銀の政策変更への思惑が行き過ぎた円安を招いた

日銀の政策変更への思惑が行き過ぎた円安を招いた、との筆者の仮説が妥当で、今後将来の円安期待が完全が消失するとすれば、ドル円と米10年金利との関係が6月以前の状態に戻ってもおかしくない。

8月2日時点の米国10年金利は2.7%台だが、これは4月以来の水準である。4月時点のドル円は125円前後なので、米金利とドル円の6月までの関係が戻れば、1ドル130円を下回り円高ドル安が進んでも不思議ではないだろう。

日本銀行がメディアなどの円安批判等に影響されていたなら......

最近の大幅な円高の動きをみると、7月まで不確実に為替市場が動いた中で、日本銀行の徹底した金融緩和維持の対応が妥当であったとことが、改めて評価されるだろう。7月後半からの米国の金利低下には、米経済の下振れリスクの高まりが影響した。

実際に、2022年前半までは、世界的な製造業部門における需給ひっ迫がインフレを押し上げていたが、年央になって需要の停滞によって需給バランスが緩和する兆しがみられている。米欧の需要減速、そして中国経済の停滞などで、世界経済の下振れリスクが高まっている。

もし、日本銀行が、春先から報じられていたメディアなどでの円安批判等に影響され、金融緩和政策を修正していれば、足元で円高は更に進んでいただろう。つまり、円安を容認し、金融緩和を続けたが故に、円高進行を吸収する余裕(緩衝材)が作られたということである。

徹底した金融緩和維持でこの余裕を作っていなければ、米経済の減速で一段と円高が進み、日本経済の復調に大きなブレーキになっていたかもしれない。この意味で、黒田総裁率いる日本銀行による徹底した金融緩和維持は、日本経済の復調を強く支えていると言えるだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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