コラム

ハリーとメーガンの進撃止まらず...アメリカを舞台に集めた巨額のカネと「大戦果」

2023年01月31日(火)18時50分
ヘンリー王子とメーガン妃

ヘンリー王子とメーガン妃(2021年9月) REUTERS/Andrew Kelly/File Photo

<王室を揺るがせたハリーとメーガン。アーチーウェル財団の「決算報告書」で明らかになった多額の資金の使い途とは?>

[ロンドン]英王室を離脱したヘンリー公爵=王位継承順位5位=とメーガン夫人の進撃が止まらない。米ストリーミング大手Netflix(ネットフリックス)ドキュシリーズ『ハリー&メーガン』とハリーの回想録『スペア(王位継承者に何かあった時の予備という意味)』を相次いで発表し、王室を揺るがせたハリーとメーガンの「決算報告書」が発表された。

2人の長男アーチーちゃん(3つ)の名前を取った「アーチーウェル(福祉)財団」のインパクト・レポート(2020~22年)。それによると、2人は公平にワクチンが行き渡るように政策提言団体グローバル・シチズンとのパートナーシップを通じコロナワクチン1266万回分の調達に貢献。さらに2600万人のワクチン接種を促し、3億200万ドル(約390億円)を集めた。

イスラム原理主義勢力タリバンに再び支配されたアフガニスタンやロシアに侵攻されたウクライナで人道危機が深まる。2人はNPOヒューマン・ファースト・コアリションと協力して7469人のアフガン脱出や、難民支援団体ウエルカムUSともにアフガン人7万4606人、ウクライナ人9万9981人を米国に受け入れるのを支援した。

ハリーは12~13年、アフガンでヘリのパイロットとして勤務していた時、6つのミッションに参加した。『スペア』では「戦闘の熱と混乱の中に身を置いている時、25人を人間だとは思わなかった。人間だと思うと殺すことなんてできない。彼らは盤上から取り除かれたチェスの駒であり、善を殺す前に排除された悪に過ぎなかった」と衝撃的な回想を披瀝した。

将来の君主に代わって戦地に赴くのが『スペア』の宿命

性的スキャンダルで今やどん底に堕ちたアンドルー王子=同8位=もフォークランド紛争に従軍した。将来の君主に代わり戦地に赴くのが『スペア』の宿命だ。ハリーは傷病兵を支援するスポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」を考案するなど、アフガン従軍の思い入れが強い。ハリーの率直な告白は同じ体験をしたアフガンやイラクに従軍した米兵の共感を集める。

温かい食事をふるまうことで世界を救うNPOワールド・セントラル・キッチンに協力し、ウクライナで5万食を提供した。米テキサス州ウバルデで昨年、発生した銃乱射事件で児童19人と教師2人が死亡したため、プレイセラピーと癒しの場として子供たちの遊び場を建設した。2人の活動の主軸は欧州連合(EU)離脱で影響力を失った英国ではなく、米国だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story