コラム

日本・EUが進める中国「退去」、ロシア侵攻がグローバル経済「分断」の決定打に?

2022年09月28日(水)18時00分
米中対立イメージ

ILLUSTRATION BY ANSON_ISTOCK/ISTOCK

<米トランプ政権時代から進行してきた米中対立もあって、グローバル経済の「分断」は貿易などのデータにも表れるようになってきている>

ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、拡大を続けてきたグローバル経済が分断の危機に立たされている。このまま世界の断絶が進めば、各国は経済の再構築を迫られるかもしれない。

アメリカはトランプ政権以降、中国を敵視する戦略に転換しており、米中は事実上の貿易戦争状態となっている。両国は、共に戦略的に重要な技術を相手に輸出しない政策を進めており、あらゆる分野において分断が進んでいる。こうしたなかで発生したのがロシアによるウクライナ侵攻である。

脅威に直面した欧州各国は、ロシアとの政治的・経済的分離を進めており、一方のロシアは中国と急接近している。9月にロシアが開催した国際経済会議(東方経済フォーラム)には西側各国が参加を見送るなか、中国が栗戦書(リー・チャンシュー)・全国人民代表大会常務委員長(国会議長に相当)を派遣したほか、各国から人権問題が指摘されているミャンマーの国軍トップが顔を見せるなど、国際社会の断絶を象徴するイベントとなった。

民主主義は世界の少数派になりつつある

英オックスフォード大の研究者が運営する「アワ・ワールド・イン・データ」によると、民主国家の数は年々減少しており、民主国家に住む人の全人口に対する比率も3割を切るなど、今や民主主義は世界の少数派となりつつある。

かつては民主国家のGDPが突出した規模だったことから、国家数や人口比にかかわらず、民主国家は非民主国家に対して圧倒的な影響力を行使できた。だが、中国の急成長によって約10年後に米中のGDPが逆転することがほぼ確実視されており、状況は変わりつつある。このままでは、世界経済が完全に分断されてしまう可能性もゼロではないだろう。

コロナ危機の前後で経済が大きく変動しているので確定的なことは言えないが、少なくともリーマン・ショック以降、コロナ危機までの10年間を見ると、貿易数量の伸びが実質GDPの伸びを下回っている。つまり以前ほど貿易の伸びが経済の成長に寄与していないことを意味しているわけだが、これが米中分断などをきっかけとするグローバル経済終焉の兆候なのかは、今のところ何とも言えない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

COP30実質協議開始、事務局長が参加国に協力呼び

ビジネス

ビザとマスターカード、手数料を5年間で380億ドル

ワールド

米下院、政府再開へ早ければ12日にも採決=ジョンソ

ワールド

米国は「経済的大惨事」に、関税違憲判断なら トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story